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第7話
「何か、あったのか?」
布団に横たわり、僕に腕枕をしてくれた竜一が尋ねる。
優しい声。太くて逞しい腕は心地良くて。この先もずっと、僕だけのものだったらいいのにと願ってしまう。
「……なにか、って?」
「腹に据え兼ねたもんでも、あるんじゃねぇのか?」
「……」
「溜め込んでねぇで、全部吐き出せ」
竜一の指先が、睫毛に掛かる前髪をそっと掻き上げてくれる。
肌を擦る微かな感触に酔いしれながら開けた視界の先を見れば、男の色気を含んだ切れ長の瞳が僕を優しく見つめていた。
『あの男に、脅されてるの?』──ゴミ捨て場での出来事が過り、直ぐに払拭する。
「覚えてる? アパートの外廊下から夕焼け空を撮影してた人のカメラに、僕が写り込んじゃったって話」
「……ああ」
「今日ね、その人と偶然会って。僕をモデルに描いてみたいって、言われて……」
「なんだそりゃ。画像データを消す代わりに、絵のモデルでもやれって脅してきたのか?」
竜一の表情が険しくなり、冷たいガラス玉のような瞳に変わる。
「ううん、そうじゃなくて。
僕が映ってる画像データを元に、描いてもいいかって聞かれて……」
引っ掛かるものがあるとすれば、データを削除せず保持し続けているという事だけ。なのに、あの太った男にされ続けている嫌がらせを隠すべく、話をすり替えてしまった事に胸がちくりと痛む。
「チッ。次に何か要求されても、簡単に引き受けるんじゃねぇぞ」
「……え」
「俺は、ソイツの素性も何もかも知らねぇんだ。何かあってからじゃ、遅ぇからな」
少し突き放すような、素っ気ない言い方。だけど、竜一なりに心配してくれているのだけは伝わってくる。
「……うん」
そう思ったら……やっぱり嬉しい。
もぞもぞと動いて身を寄せると、僕を守るかのように腕を背中に回してくれる。
空調の効いた部屋は、僕一人だと少し肌寒くて。だけど、一日中太陽の下で働いている竜一の肌に触れると、火傷してしまいそうなほど熱くて。
それでも、小春日和にガラス越しでひなたぼっこをする猫のような気分になるのは……竜一の傍が、僕にとって居心地の良い場所だから。
離れたくない。
二人で幸せな日々を生きていきたい。
願うのは、ただそれだけ──
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