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第10話

……はぁ、はぁ、はぁ、 ズッ、ズッ、ズッ、ズッ── 弾むように大きく揺れる視界。その度に感じる、腹の奥の異物感。突き上がる鈍い痛み。 抵抗したくても、逆らえない。 まるで操り人形のよう。 この先もずっと、僕はこの人の望み通りにしなければいけないんだ── 竜一のいう通りだった。 安易に支援なんか、受けなければよかった。 もし時間が巻き戻るなら……お願い。 あの日に、遡って── 「……あぁ、堪らないよ」 ハァ、ハァ、ハァ…… 優しさを滲ませたような瞳の下にある唇が僅かに歪み、その割れ目から赤い舌がチラリと顔を覗かせる。 その行き先は、露わになった僕の──小さな尖り。 「……ん、あぁ″っ、!」 はぁ、はぁ、はぁ…… 真っ白な空間に横たわり、身支度を調える会長をぼんやりと見つめる。 果てた白濁液は、僕の肌に付着したもの以外は見えそうにない。 「同棲中の彼と、この先も平穏に暮らしたいのなら……時々こうして私に抱かれるといい」 「……」 「悪いようにはしないよ。……君も、その方がいいだろう?」 ……なんで…… なんで勝手に決めつけるんだ…… 僕はこんなの望んでいない。 竜一を裏切るようなことなんて── 『嘘だね。……君は現に、山本くんを騙しているじゃないか』 「───ッ、!」 眩い光に包まれた後、ぼんやり戻ってくる景色── 穏やかにカーテンの裾が揺れ、暑さの緩んだ微風が僕の頬を撫でる。と同時に降り注ぐ、夏特有の直線的な陽光。 ……ゆ、め……? 徐に瞬きをすれば、ぴくんと跳ねた指先から現実が流れ込み、じわじわと肌表面に気怠さを含んだ暑さが戻る。 「……」 どうして……あんな夢なんか。 もう一度瞬きをすれば、肘の内側や首筋などに滲んだ汗の感覚が戻り、視界がクリアになっていく。 シャワシャワ、シャワシャワ…… ……昨日、竜一に言われたから? 不安が形となって、夢に現れたんだろうか。 まさか、消えた記憶の断片……じゃないよね。 「……」 じわりと汗ばむ身体。 ゆっくりと身体を起こし壁に掛かった時計を見れば、もう午後三時を回っていた。

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