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第11話

××× ──カシャッ、 歩道脇から響く、軽いシャッター音。 その音につられて見れば、四角く整えられた低木の向こう側でカメラを構えている人物が視界に映った。 「……おい、お前!」 目が合った途端、立ち上がって僕を指差す。酷い剣幕で睨み付けてくるソイツは、ゴミ捨て場等で僕に嫌がらせをしてくる──あの男。 「よ……よくも、人の大事なものを踏ん付けたな!」 興奮気味に捲し立てられ足元に視線を落とせば、小さな色紙の端が靴先の下に隠れていた。 「それは、やっとの思いで手に入れた、キララちゃんの直筆サインなんだぞ!」 「……え」 足を退け、色紙を拾おうと屈めば、醜い贅肉を揺らしながらすっ飛んできた男が奪うようにして拾い上げる。 「ハァハァ……き、汚い手で触るな。 撮影まで妨害されて、……ハァ、こっちは迷惑しているんだ。ハア、ハア……」 「……」 撮影……? 息を切らせ、大事そうに色紙を抱える男から視線を外し、反対側の植え込みに目を向ける。その低木の上には、赤と白のひらひらしたメイド服の可愛らしいぬいがちょこんと鎮座していた。 「キララちゃんを、我が家にお迎えした日の記念撮影だったんだ。 それを……どうしてくれるんだ。お前がこんな所を通ったりしなければ、こんな──」 「……」 確かに、不注意だった。 故意はなかったとはいえ、人様の大切なものを汚してしまった。 でも。 よりによって、何でコイツなんだ── 「……あっ、いい事考えた!」 ぶつぶつと文句を言っていた男の声色が、突然変わる。驚いて男へと視線を戻せば、只でさえ細い目を更に細め、口元を不気味に歪めていた。 「この色紙の代わりに、お前がキララちゃんと一緒に映れ」 「え……」 「勿論、お揃いの衣装でだ」 一体、何がどうなってそういう思考に行き着くんだ。 軽蔑した目を向ければ、頭の天辺から足先まで舐めるように僕を見た後、自身の上唇をじゅるりと舐める。 「……っ、」 気持ち、悪い…… じっとりと絡みつくような視線。恍惚とする顔。 右手で左の二の腕を掴み、肩を内側に丸めて男を拒絶する。その態度が気に入らなかったんだろう。眉間に皺を寄せた男が突然怒号を飛ばす。 「──なんでだっ! お前の写真を勝手に撮った奴には、笑顔で許してたじゃないかっ!」 ……え…… まさか──あの時の光景まで、見られてたなんて……

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