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第23話
自動ドアを抜け、待機していたタクシーに乗り込む。
パタンと閉まるドア。行き先も告げないまま大通りを走り出す。
「……」
何処へ向かうんだろう……
一抹の不安を抱えたまま外を眺める。だけど、見たこともない景色では確かめようもない。
「……本当に貴方は、危機管理能力が乏しいですね」
「え……」
不穏な台詞に、心臓を捻り潰されたような感覚が襲う。
怖ず怖ずと隣に座る男に視線を移せば、変わらぬ笑顔を貼り付け、底知れぬ冷たい眼でじっと僕を見つめていた。
「院内で会った時から、僕が何者か警戒しながら様子を窺っていたでしょう?
なのに何故、容易くタクシーに乗ってしまわれたのですか?」
「……」
「まさか……僕の話す内容から、味方だとでも?」
核心を突かれ、開きかけた口を噤む。
「……」
……確かに、そうだ。
でも、それだけじゃない。
あの時──竜一の背後にいた人影に、何処となく似ていたから。
「意地悪な発言をしてしまい、申し訳ありません。
……実は、こういう者です」
心の奥底を探るような眼が外され、内ポケットから何かを取り出す。
スッ、
二本の指で挟み、目の前に差し出されたのは──一枚の名刺。
──『del. N』
「“delete”……つまり、“抹消”」
真っ白なそれを受け取ろうとして、直ぐに引っ込められる。
「一度ネットの海に流れてしまったdata は決して消える事はない、と言われているのはご存知ですよね。
我々は、それを可能にする組織──つまり、個人が所有する全ての端末に至るまで調べ上げ、deleteしているのです」
「……」
「今回、『love letter』というアプリで売買された娘の盗撮dataを全てdelete して欲しい、との依頼を受けまして。data保有者を全て洗い出しdelete してきました。
……が。あの男の端末から、見るも無惨なdataが多数見つかりましてね。delete するのはdataだけで良いのか、改めて依頼主のご意向をお伺いしたのです」
名刺を入れたケースを再び内ポケットに仕舞いながら、淡々と男──Nが続ける。
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