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第26話

驚いて田辺を見れば、デジカメの紐を首に掛ける彼と目が合う。 「世話になってる兄貴が、今でも君に惚れ込んでてね。もう二度と流出data(デジタルタトゥー)に苦しめられないよう、ネットに繫がっていない個人の端末や媒体に至るまで探って、盗撮された君のデータを消していたんだよ」 ……そんな、気の遠くなるような事を? 僕の、ために……? 「でも……今回、君がターゲットにされていた事は、敢えて兄貴には伏せておいたんだ。 もし知られたら、カッとなって何をしでかすか分からなかったから」 「……」 「だから、君があの男のアパートに連れ込まれているのを見て、山本さんに連絡したんだよ」 ……それで、竜一が…… 僕の知らない所で、そんな事があったなんて…… 刺すように痛む、噛み千切られそうになった乳首。そっと胸を押さえると、身体中を弄られた感触が蘇り──皮を剥ぎ取って捨て去ってしまいたいほどの衝動に駆られる。 「無事で、本当に良かった……」 俯き掛けた視線を上げれば、眼鏡の奥にある目尻の下がった眼が柔く細められる。 純度の高いその瞳を見つめているうちに、張り裂けそうな心と身体が和らいでいく。 「……」 一瞬でも僕は、この人を…… その視線に耐えきれず、目を伏せる。 Nから見れば、僕は情けないほど危機管理能力がないんだろう。 だけど……疑いの目を持ってしまったらキリがない。 このまま人を遠ざけ、ひとりぼっちになってしまったら──僕はきっと、生きていけそうにないから。 「あ、そうだ」 俯く僕に、何も知らない田辺が明るい声を上げる。 「ここを立つ前に、ひとつだけお願いがあるんだけど。……いいかな」 コツ、 視界の端にある田辺の片足が動く。それまで保たれていた一定の距離を縮められ、思わず顔を上げる。 「兄貴に、会って欲しいんだ」 「───おいっ!」 突然── 愛しい人の声がしたかと思うと、太くて逞しい片腕が背後から伸び、身体を引き寄せるようにして抱き締められる。 「その兄貴に伝えておけ。 お前とは色々あったが、今では感謝してる、とな」

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