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第4話

四本王4話 妖狐の狐紅 朝餐の間にて。 その日の朝食はまだ嫁入りを決めていない桜天、狐紅、そして王の三人で取る予定であった。 しかし、朝食前に桜天が王に申し上げた。 「薔鬼王様、恐れながら申し上げます。私は貴方様の婚姻の申出を受けるつもりはございません。私に構う時間は無駄になってしまうと思いますので、明日から朝食は狐紅とお二人でどうぞ。」 「え〜!なんだよそれ〜!ご飯くらい一緒にいいじゃ〜ん!」 「薔鬼王様の時間は我々の時間より遥かに貴重なんだ、一秒足りとも無駄にはさせられない。私は先に失礼します。」 一方的に喋って、一礼し離席してしまった。 桜天の背中に向かって、狐紅は文句を放つ。 「桜天のケチ〜!」 「良い良い!我は桜天の意思を尊重する!それに、我はちょうど狐紅と二人で話がしたかった!」 「ふ〜ん?向蛇と雪椿を攻略して、次の標的は俺ってことですか〜?」 「その通りだ!」 「じゃあ向蛇と雪椿が何で嫁入りを決めたか教えてくださ〜い!それを聞いて検討しま〜す。」 「それは出来ない!二人の個人的なことを我が勝手に喋る訳にはいかない!」 「ええ〜、王サマもケチ〜!決めた人の意見が無いとわからないですよ〜!部分的でも良いですから!ね?」 狐紅は王に向けて甘えた声を出し、ウインクしておねだりをする。どうやら向蛇、雪椿、桜天と違い、彼は自分の顔の良さを理解して利用する性格をしているらしい。 「ウハーーー!!!イケメンのおねだりウインク最高だ!でも駄目だ!」 「じゃ〜あ、代わりに俺の秘密も教えてあげま〜す!それと交換でどうです?ねえ〜?」 今度はわざと顔を傾けて上目使いで王の顔を見る。きっと今までもこうして顔の力で周りに言うことを聞かせてきたのだろう。 「可愛いいいいい!でも駄目だ!我の秘密ならいくらでも話をしてやろう!」 「ん〜、それは遠慮しときます〜!雪椿、昨日桜天と俺のところに来た時、顔が前と全然違ったんですよね〜?相当良いことがあったんじゃないですか〜?」 「我と飛行龍に乗ってデートをしたと言うことだけ言っておこう!狐紅もどうだ?行きたい場所があれば何処へでも連れて行くぞ?」 「俺〜?う〜ん、どうしようかな〜?あ〜、向蛇もどこかに連れていってましたよね〜?どこに行ったんですかあ?」 「内緒だ!」 「え〜もう〜!」 結局、この日の朝食はずっとこんな感じで、あの手この手で向蛇と雪椿とのことを聞き出そうと狐紅と、頑なに断る王、王からの誘いをはぐらかす狐紅。という会話が続いて終わってしまった。 その後、王は忙しい公務の合間を縫って数日間狐紅との会話を試みた。しかし、暖簾に腕押しするような感覚だった。向蛇や雪椿は素直で嘘が付けない性格だった。それに比べて狐紅は凄く嘘が上手かった。空中庭園にある離宮の長椅子でごろごろと日向ぼっこをする狐紅に話しかけるが、こちらの質問はのらりくらりと誤魔化されてばかりだった。 質問の答えすら嘘ばかりだった。先ほどした質問をもう一度すると全く違う答えが返ってきて、そうでしたっけえ〜?とへらへら笑って誤魔化された。 会話中視線すら合わせてくれないこともあった。狐紅はきょろきょろと色々な方向を見たりして、何を考えているのか全くわからなかった。 王は、妖艶で可愛いイケメンに弄ばれるのも悪く無いと会話を楽しんでいた。 そして王は数日経って、わかってきた。 狐紅は全て嘘をついているので無く、本当のことを言っている時もあるのだ。三回聞いて、二回目答える間隔が少し空いた時は本当のことを言っているようだった。その時は三回目も同じ回答になっていることに気がついた。そして、その時は一瞬だが尻尾が少し横に揺れるのだ。 加えてもう一つ、上手く隠してはいるが、狐紅の視線がある一定の場所を見る回数が多いことに気がついた。視線の先にあるのは王族専用図書館。そして図書館には一人で勉強をしているらしい桜天の姿が見えた。成程、そう言うことか...。 「桜天」 気にしているであろう人物の名前を言うと一瞬驚いた表情をしかけてすぐに誤魔化すようなうすら笑顔に戻った。 「あれ〜?名前間違えちゃいました〜?俺は狐紅ですよ〜?」 「桜天が嫁になったら、狐紅も嫁になるだろ?」 「な〜にそれ〜?そんなわけな「狐紅は本当のことを言う時、尻尾が横に揺れる!」 飄々として薄ら笑いを浮かべていた狐紅の顔が固まり、真顔になる。 「...何ですか?それ?」 「我だってこの数日を無駄にしていたわけではない!狐紅が何を考えているのか、何をしようとしているのかを観察していた!」 「へ〜、唯声が大きいだけの王サマじゃないってことですね〜」 「よく通る声だと褒められる!」 この王には、皮肉は通じない様だ。皮肉に眩しい太陽の笑顔で返されて狐紅は反応に困ってしまった。 「狐紅は言葉で我に本音を言うつもりは無いと感じたからな!我なりに本音を引き出す方法を考えた!」 「それで王サマに嘘が通じないと分かれば、俺が本音で話すだろうと考えた訳ですね〜?わざわざ俺に見分ける方法を言ったってことは...他にも俺に言っていない嘘を見抜く方法がある、だから嘘はつくなって言いたい訳ですね〜。」 「その通りだ!数日話して思ったが、狐紅は頭の回転が早いな!常に言う前に察している気がする!」 「俺、頭だけは良いんですよね〜」 口はヘラヘラと笑ってはいるが、目は王が意外と抜け目ないと気づいて警戒しているようだ。王は警戒されていることに気づいてはいるが敢えてニコリと笑い返し、声高々に宣言した。 「我は必ず桜天を嫁にする!だから狐紅も必ず嫁になる!」 「わかりました〜。本当に桜天がなるなら俺も嫁になりますよ〜。多分無理だと思いますけど〜?」 「よし!交渉成立だな!数日後を楽しみにしていてくれ!」 ぎゅっと狐紅の手を握って、早速桜天のところに行ってくる!と行ってしまった。行動が早い。 でもね、王サマ、無理ですよ。 だって桜天はもう将来全部決まってるんだもん。 ▼▽▼▽▼▽▼▽ 時を遡る。 狐紅、桜天、共に七歳の時。 「へっへ〜ん!上手くで〜きた!」 「まあ〜、狐紅は本当に天才ねえ!たった七歳でもう妖狐の札枷が一人で作れるなんて!」 「桜天に自慢してこよ〜っと!」 狐紅は妖狐一族の立派な屋敷を飛びだし、隣の鴉天狗一族の屋敷へ一目散に駆け出した。 「さって〜ん!」 「う、狐紅...」 「見てよ〜!俺もう呪具一人で作れんだ〜!」 桜天は、何かを後ろにサッと隠した。 「何それ?!短剣?」 「大剣...のつもりだった、妖力が足りなかった...」 「桜天は不器用だな〜そんな武器じゃ全然使えないじゃ〜ん!」 「うるさい!いつか、いつかちゃんと大剣を作れる様になるんだ!」 この国では、鴉天狗一族と妖狐一族は建国初期時代から続く歴史ある一族だ。両家とも王国の繁盛区に立派な屋敷を持ち、鴉天狗一族は戦の武装職人として、妖狐一族は封印結界の呪具職人として、代々王家に剣や封結界呪具を納めてきた。 この歴史ある名家である鴉天狗一族と妖狐一族に、桜天と狐紅は同じ年に生を受けた。産まれた頃から家同士の付き合いもあった。 桜天は鴉天狗一族の長男で次期当主だった。兄弟は三つ下の弟が一人。対して狐紅は次期当主は四つ年上の姉だったので、格式高い家に産まれたものの気楽な人生だった。 鴉天狗一族は厳格な教育方針であり、桜天も弟の桃天も、何歳で何をするという年表が家に決められていた。五歳になったら武器作りの修練を課され、十歳になったら妖兵になるため練兵校へ入校する。これは武器の使用経験を得るため数年は妖兵になるのが慣わしのためだ。そして二十歳になったら妖兵になり、そして二十五歳には妖兵を辞めて嫁を取り、三十歳で当主になり跡を継ぐ。家に決められた道を歩く人生で、桜天も特に異論なく従っていた。 対して妖狐一族は、名家だが緩い家柄で「みんなお好きに生きてどうぞ〜!出来れば兄弟どっちかは跡を継いでね〜!」くらいの緩さだった。だから狐紅からしたら、横目で見る桜天の人生はとても窮屈に見えた。 狐紅、桜天、共に九歳の時。 狐紅は桜天に聞いたことがある。 「ね〜、人生つまんなくない?」 「私にとってはこれが普通だ」 と返されてしまった。 狐紅は特に練習など重ねなくても呪具は最初から上手く作れる才能があったし要領が良かった。対して、桜天は才能が無かった。 だからこそ真面目にコツコツと努力を重ねていた。 狐紅からしたら、何度も失敗し試行錯誤を重ねて逃げる道すらない桜天の人生は苦しいものにしか見えなかった。 そんな二人も十歳になり、共に練兵校へ入校した。 妖兵には妖力の強さが求められる。妖力とは軍略兵に重要な知力、警護兵に重要な顕在力、治癒兵に重要な精神力、宮仕兵に重要な体力の四つの要素の総合値で決まる。妖怪の強さを示す基準だ。妖兵になり、上級兵の宮殿仕えになると一部隊四人はそれぞれ一つづつ担当することになり、隊長は軍略兵が務める。 練兵校への入試も、妖兵と同じく妖力が点数化されていた。一定の合格点を上回ったものが入校を許された。 そして入校後は将来上級兵になった時を想定し、毎年年度末の妖力測定の結果ごとに部隊が組み直された。実際の妖兵は入団時に組まれた部隊は基本的にその後固定となる。だから練兵校では適性を見極めるため様々な妖怪と部隊を組ませて経験を積む教育方針であった。 初年度の部隊は、入試時の妖力で部隊が決められた。狐紅は抜きん出て知力が優れていたため、練兵校一年目では成績最上位の第一部隊へ配属された。桜天は第二十部隊で、狐紅は人生ではじめて桜天と離れることとなった。 練兵校へ入校して数ヶ月。狐紅は自身に違和感を感じていた。何というか、凄く不調なのだ。知力は相変わらず高いものの、精神力と顕在力が入校前より下がっていた。 (まあ天才ぶって調子こいてたけど、俺って思ったより普通だったのかもな〜...あ〜あ、桜天といた時はあんな良い感じだったのにな〜) 二年目、三年目と知力は相変わらず光るものがあったが、精神力と顕在力は下がり続け、四年目には桜天と同じ隊になるくらいには下がっていた。 狐紅、桜天、共に十四歳の時。練兵校四年目の春。 「狐紅、久しぶりだな」 中々会えなかった桜天と会うのは四年ぶりだった。 「久しぶり〜、桜髪の王子様〜」 「その呼び方やめろ」 「いいじゃ〜ん、練兵校の女の子たちにきゃーきゃー言われて素敵な呼び名つけてもらってさ〜」 「そっちこそ“堕落の貴公子”様だろ」 「桜天もそういうあだ名知ってるんだ〜?」 「お前はどの隊に居ようと目立ってたからな。知力は高いのにやる気が無い麗しの狐貴公子、だったか?取っ替え引っ替え女性と付き合ってるらしいな。」 (やる気が無いとかじゃ無いんだけどな〜、そう見えるのか〜...) 「女の子だけじゃなくてたまに男もいるよ〜」 「そういうことじゃない」 「まあ俺たちの顔面で目立たない方が無理だよな〜、今年はよろしく〜」 「私と一緒になったからにはやる気を出させてやる」 「え〜お手柔らかに〜」 二人は再び行動を共にすることになる。この年、狐紅に自信でも驚く変化が起きた。下がり続けていた精神力と顕在力が急に上がったのだ。 「出るじゃ無いか、やる気」 「まあね〜」 (何で?四年目で急に覚醒でもした?) 理由がわかったのは、その年同じ部隊だった桜天と、河童と化け狸の妖怪の四人で鬼婆の球戯場へ遊びに行った時だった。鬼婆の球戯場では、妖力で三回玉を転がして十本の棒を倒して点数を競う遊びができる。練兵校の近くにあったため、生徒たちの行きつけの遊び場になっていた。一番背が高い棒は倒れた事がなく、生徒の間では「鬼婆、絶対倒れねえように妖力使ってるよなー!」「ずりいよなー」と噂話が出るほどであった。 桜天は軍略兵役の仕事が残っており、遅れて合流する予定だった。 いつものように雑談をしながら球技場へ向かう。まずは狐紅からだ。 狐紅は一回目を投げる。一本倒れた。 「狐紅調子わりーじゃんー、いつも最初に三本は行くのにー」 「うっせ〜、次だよ次!」 河童に茶化されながら、次の球を用意する。 「お!桜天、こっちこっちー!」 化け狸の声で、桜天が合流したことがわかる。 「遅かったなー」 「今日のまとめに時間がかかってな」 「桜天真面目だよなー、おれっちだったら無理だぜー」 「カパパパ〜!言えてる〜!お前絶対隊長役出来ねえもんなあ〜!」 桜天と友人たちが雑談するのを後ろ耳に聞きながら、狐紅は二投目を投げた。 バッコーーーン! 一番背が高い棒どころか、全ての棒が倒れた。 「うわー!狐紅すげー!」 「まじ?!お前色々才能ありすぎだろ〜!」と騒ぐ友人の傍ら、狐紅は以前の経験と含め結論を出すことに成功した。 多分、自分は桜天の目の前じゃ無いと本来の実力が出せないのだ。 「凄いじゃないか!狐紅!」 桜天は普段、不真面目な狐紅を怒ってばかりであまり褒めてくれない。そんな桜天が、球戯場で笑って褒めてくれた顔を見た時に完全に自覚した。 自分は理性で制御できないくらい、この幼馴染のことが好きなのだ。今の成功も、好きな子の前で格好をつけたい男の馬鹿力というやつなのであろう。 自分はもう、桜天が側に居なければ駄目だ。この結論に辿り着いてからの狐紅はそれ以降の人生は如何にして桜天の側にいるかに頭を使うようになった。 練兵校の部隊分けを分析した。どの妖力の、どんな性格の生徒が、どんな割合で振り分けられているか、自分がどのような振る舞いをすれば桜天と同じ部隊になるかを毎年分析した。そんな計算の上に側にいることなど微塵も見せず、毎年春になると桜天に「あはは〜!今年も一緒だ腐れ縁〜!」と声をかけるのが慣習となっていた。 本番の妖兵入団試験でも、わざと妖力を調整して桜天と同じ隊に配属されるようにした。入団時は第八百部隊。十四歳の時に組んだ妖怪たちが相性が良く、河童と化け狸との部隊だった。 学生時代に自覚してから一緒にいる事に成功していたが、二十五歳になれば桜天は妖兵を辞めて鴉天狗一族が決めた嫁を貰う。そうなれば一緒にいられなくなる。 (どうにかして、桜天に妖兵を続けさせられないかなあ...そうしたら一緒にいられるのに...) 転機は少しづつ訪れた。 狐紅、桜天、共に二十一歳の時。 「お父上がぎっくり腰に?」 「そうなんだよー、おれっちの家仕立て屋なんだ。服って意外と重くてさー。一気に持った時にやっちゃったんだってさー」 「そうか、お大事にな」 「何か困ったら言えよ〜」 「ありがとうー、みんなも達者でなー」 化け狸が家庭の事情で妖兵を辞め、代わりに新人が部隊に入ってきた。 「はじめましてえ!八岐大蛇の向蛇ですう!」 「元気だね〜、じゃあまず妖力測ろっか〜」 「はいっ!」 狐紅は元気な新人の妖力測定をして驚く。 (何だこの体力?!上級兵並じゃ無いか?!) 向蛇が配属された後、部隊は破竹の勢いで出世した。 次の年、狐紅、桜天、共に二十二歳の時。部隊は第五百部隊にまで出世していた。今度は河童が実家の水屋を継ぐことになり、また別の新人が配属されてきた。 「雪男の雪椿です。」 「元気無いね〜、じゃあまず妖力測ろっか〜」 「はい。」 狐紅は無愛想な新人の妖力測定をして驚く。 (うわ、雪女一族って顕在力高いって聞いてたけど雪男でもこんな高いのかよ...) 狐紅の頭に今の自部隊の妖力値が浮かぶ。 突出した自分の知力と向蛇の体力、平均をかなり上回る雪椿の顕在力___ おそらく届く、妖兵百部隊しか到達できない高み___上級兵の妖力値に。 (上級兵の宮殿仕えまで出世して、桜天を隊長の軍略兵にすれば、流石に妖兵を続ける気が出るかもしれない!) 雪椿を入れた四人の部隊は、第四百部隊にまで出世した。 一年後、狐紅は桜天に第四百部隊で宮廷試験を受けるのを提案した。 「却下だ。私はあと一年しか妖兵が出来ない身だぞ。そんな者が宮廷試験を受けるなど、失礼だ。それに宮廷試験は通常五年以上妖兵として勤めて漸く実力が届くようになる難易度。我々の部隊の実力では無理だ。」 「でもさ〜、武器屋としては今の自分の部隊の実力が妖兵の中でどこまで通用するか知っておくのも大事じゃな〜い?例え受からなくても上級兵に求められるものを知れる貴重な機会だしさ〜?今の立場でしか出来ない経験ってやつだよ!」 「確かに...妖兵でいる間しか宮廷試験の経験は出来ないか...」 「そ〜そ〜!ま、うちの部隊には体力無尽蔵の向蛇が居るから良いところまでは行くって!」 桜天を何とか言いくるめて第四百部隊は宮廷試験に参加することになった。 宮廷試験当日。 当たり前だが周りの受験者は自分たちより遥かに格上ばかりだった。向蛇や雪椿は完全に萎縮してしまっており、狐紅は焦っていた。 (まずい...!最初は体力試験だ!確実に点を取りたいところだから何とか向蛇の緊張を解かないと...!) 焦る狐紅の横を桜天が通りすぎ、向蛇に声をかけた。 「大丈夫だ向蛇、ただ好きにお前の動いてくれば良い。帰ったら鼠の丸焼きでも食べに行こう。」 「え?!鼠の丸焼き?!いいのお?!うん!頑張るうう!」 大好きな食べ物のことで頭がいっぱいになったのか、向蛇は緊張か解けたようで体力試験は満点に近い高得点を叩き出した。 顕在試験は、顕在した物質を決められた時間の間放出し続ける耐久試験だった。第四百部隊は雪椿が受け、冷気を発し続けた。しかし、あと少しのところで尽きそうになった。 「無理です...もう持たないです...!」 「諦めるな雪椿!あと少しで合格点だ!」 桜天は最後まで横で声をかけ続けていた。結局この試験は合格点には達さなかったが、体力試験の追加点を考えれば合格は可能な範囲の点数を取ることが出来た。 桜天は確かに要領が悪い。突出して優秀でも無い。だが、何故そんな桜天が学生時代から隊長になって皆がついてきたか。 それは桜天が人をよく見て、欲しい言葉をかけて支えることが出来る人だったからなのだ。 桜天はよく人を叱る。 でもそれは裏を返せば、叱れるほど他人をよく見ているということ。 叱る時は勿論全力だが、励ます時、褒める時、寄り添う時。全部を全力で向き合ってくれる。だから桜天は人に信用され、桜天が側に居ると安心できるのだ。 宮廷試験の時、周りに格上ばかりで萎縮していた向蛇と雪椿が実力を発揮できたのは桜天がいたからだ。 きっと、俺が桜天の近くにいて実力が発揮できるのも、好きだから以上に、桜天の才能なんだ。 桜天には人に寄り添う才能があるんだ。 俺は、俺に出来ることをしよう。 自分に出来る、桜天といる為の精一杯。 その後も精神力試験、知力試験が行われた。 狐紅は知力を全力で使い、本来第四百部隊程度の実力では合格する筈の無い宮廷試験に合格した。第四百部隊には狐紅の知力、向蛇の体力と、妖力を底上げする常識を逸した力が二つも存在していたことが大きかった。 (やった!これで桜天の気が変わるかもしれない!) 狐紅は希望に縋る。 しかし、 「ありがとう狐紅、宮殿仕えになれるとは想定外だった。当主になったときこの経験はとても役に立つだろう。」 「え、待ってよ桜天〜?せっかく宮殿仕えまで出世したのに辞めちゃうの?勿体無いって!」 「そうだ、これは大変名誉なことだ。大丈夫、辞めるのは私だけだ。お前や向蛇、雪椿はそのまま居たら良い。」 自分に出来る精一杯をしたのに、桜天の気持ちを変えることは出来なかった。 狐紅は絶望した。 絶望を感じていた矢先に王の突然の嫁にする発言。狐紅からしたら、渡りに船だった。 鴉天狗一族や妖狐一族よりも更に格上の王家に嫁ぐとなれば、家の人間たちも跡を継がなくても納得するだろう!桜天が王の嫁になりさえすれば、ずっと一緒にいられる! しかし、狐紅も「好き!ずっと一緒にいて欲しい!一緒に嫁入りしよう!」と素直に言えるような性格をしていなかった。冷やかしのように探りを入れる発言しか出来なかった。 そんな中、向蛇と雪椿の嫁入りが決まった。流れに乗るよう促せばいけるのではと桜天を誘ったが、冷たく断られてしまった。だから狐紅は、何とかして王から向蛇と雪椿を説得した方法を聞き出そうとしていたのだ。 結局、理由を聞き出す前に王に嘘をつけなくなってしまったため、理由はわからないままだが構わない。 王が桜天を嫁にしてさえくれれば。 「俺のために頑張ってくださいね〜、王サマ〜」 王が去った後に、狐紅は独り言を呟いた。 ▼▽▼▽▼▽▼▽ 次回!ツンデレ吊り目美人を攻略せよ! 桜天の過去編もあるよ! ▼▽▼▽▼▽▼▽

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