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第18話

四本王18話 戦いの終わり 「行くぞ百又!」 「御意!」 王の合図で二人は同時に走り出し、速さが勝る百又が先に呪いに到達して連続で蹴りを浴びせる。弦狼との戦いで既に手は折れ脚の感覚はおかしかったが、そんなことは気にならない。呪いは百又の超速に翻弄されている。 黄金の角が光る王は、黄金の大剣を振りかざす。 「我は、童貞では死ねん!!!」 そのまま呪いに向けて走り出す。 「嫁の!!!雄っぱいが!!!」 ガッ! 呪いの角が一本折れた! 「美脚が!!!」 バキッ! 角がもう一本、 「尻が!!!」 もう一本折れた。 「お腹が!!!我に触られるのを待っているのだ!!!」 ドッコーン!!! 呪いの角が全て折れた!!! 建国の前儀、「血解の儀」は成功した! 角が無くなると呪いは砕け散り、望狼の身体から剥がれ落ちた。既に意識が無く、支えが無くなった望狼の身体はその場に崩れ落ちた。呪いが消え、宮殿中を覆っていた闇が晴れていく。 最後まで立っていたのは薔鬼王だった。 「王の勝利だにゃ!!!」 百又の言葉を皮切りに、向蛇、雪椿、桜天は王に駆け寄る。王は力を出し切り、その場に座り込んでしまった。 「しょおちゃあああんんんん!!!良かったよおおお!!!」 「本当にお疲れ様でした...」 「流石我らの薔鬼王様です!」 一人、狐紅だけは王に駆け寄らずにいた。 この騒動の原因は自分だったから。 「狐紅...」 「お、王サマ...」 「流石に動けなくてな...側に来てくれないか?」 「でも俺...」 「モタモタするな!薔鬼王様がお待ちだ!」 桜天が、狐紅の手を引く。 それが当然であるかのように。 狐紅は、動けない王の目の前にしゃがみ込んだ。 「王サマ...桜天...向蛇...雪椿...その、俺のせいで、ごめんなさい...」 「気にしなくて良い「本当に良い迷惑だ!」 「さ、さっちゃん!?」 「私たちはもう家族なんだ!お前はその抱え込み癖を治してもっと素直に話せ!」 「桜天...うん、ありがとう...」 「我は、狐紅に弄ばれるの結構好きだぞ!」 「薔鬼王様!狐紅が調子に乗りますから!」 「うむぅ...桜天は厳しいなあ...」 「ふふふ、そうですね...」 ▼▽▼▽▼▽▼▽ 国を騒がせた誘拐騒動はこれにて幕を閉じた。暫くすると第一部隊が月影宮殿へ駆けつけ、増援を要請した。自力で動けない者は運ばれ、気絶した主犯の望狼と狼男二人には妖狐の札枷がかけられ妖力を封じられた。 事件から二週間後、主犯の望狼は十年の国外追放、狼男二人には百又と第一部隊の監視の元一年の社会奉仕活動が命じられた。 王は薔薇宮殿地下の牢獄にいた。王は妖力消費が激しく全治二ヶ月の大怪我を負ったが、この二週間でなんとか歩けるくらいには回復していた。 この牢獄には、土蜘蛛やぬりかべなど防御と捕縛に優れた複数の妖怪の妖力が込められており酒呑童子や狼男であろうと中に入るとまともに妖力を発揮することは出来なくなる。 牢を経て、王の対面に座っているのは事件の主犯である望狼。牢獄に投獄されているにも関わらず、妖狐の札枷が手には五個、脚にも五個も付けられている。酒呑童子といえど、これだけ妖力を封じられれば妖兵数人で抑えられる程度の力しか出せない。今日は、王が望狼に罪状を言い渡す日だったのだ。 「たった十年の国外追放とは甘すぎるな。悪いことは言わん、死刑にしておけ。」 「貴方が本当に妖全華を滅ぼそうとしていたならそうしたんですがね。」 「何だと?」 「貴方と狼男兄弟の被害に遭った妖兵たちは治癒兵の妖力で治る範囲の外傷でした。貴方は必要以上に国の人を傷つけられなかった、貴方は自分が思っているほど非情じゃ無かったんです。」 「甘いな、オレ様のような危険分子は殺しておかなければまた同じようなことが起こるぞ?」 「そうしたらまた我が対応するだけです。この国の危機を全て受け入れるのが王の役目ですので。」 薔鬼の目を見て、望狼はこれ以上この王には何を言っても無駄だと悟る。 「オレ様の負けだ、元よりこの国には金輪際戻る気は無い」 そこに、急いで地下階段を降りてくる足音が聞こえてきた。 「王サマ!」 「狐紅!何故ここへ来た!」 王は、狐紅と望狼を会わせるつもりは無かった。狐紅を庇うように間に入る。 「今日、その人が国を出るって、聞いたから...」 と急いで来たものの、狐紅は黙ってしまった。 一呼吸して、顔を上げる。 「俺、もう抱え込まないって決めたから...!だからアンタに、ちゃんと言いたいこと言いに来た!」 「...あの夜とは別人のようだな。本当に満たされた目になった。」 望狼が悲しそうに笑う。 「狼男は生涯一人だけを愛す。オレ様はずっとお前だけを愛す。」 「...俺はアンタを愛せはしないけど、アンタに俺がしたことは無しにして良いことじゃ無い。ちゃんと、覚えてる。一生忘れないで生きていくよ。」 「十分だ、オレ様はずっと愛しているぞ狐紅。この国に飽きたらオレ様のモノになりに来い。」 望狼は妖兵に連れられ、王と狐紅の元から去って行った。 ▼▽▼▽▼▽▼▽ 望狼が妖兵たちに連れられ宮殿を出ると、望狼は顔を掴まれた。 「やはり綺麗なピンクだーーー☆★」 薇酒だった。 「離せ」 望狼は札枷の付いた腕で薇酒を引き剥がす。 「遠目で見た時、顔の傷のピンクが僕様好みだと思ったぞ☆近くで見るとやはり良いピンクだった★」 「二十年経とうとも貴様は変人のままだな」 「これから十年頼むぞ☆僕様がこれから監視役だ☆妖力があって暇な奴でことで適任だったから立候補した★」 「王族様の癖に罪人の監視役とは哀れだな」 「僕様からすればお前が罪人だろうが酒薔だろうが望狼だろうと関係無いからな☆」 「...どういうことだ」 「居なくなってしまってもう一生会えないと弟が生きていて二十年ぶりに会えたんだぞ☆生きて話が出来るだけで万々歳だ★」 「貴様など兄では無い。」 「時間は十年もあるんだ☆二十年出来なかった話を沢山しようぞ★ 薔鬼は国の王だから立場があるが、僕様はそういうの無い自由人だからな★」 望狼は返事をせず、横切って王庭を歩き出し、城門へ向かった。 薇酒は無視されるのがわかっていたかのようにさも当然に横に並んで歩き出す。 「そうだ☆いっそ月影宮殿に引き続き国を作るのはどうだ?薔鬼は建国の儀式をし終えて無くてまだあの土地は空いている★」 (___オレ様は薔鬼に酒薔である場所を奪われ、薔鬼に望狼としての野望を砕かれ、薔鬼に罪人としての死に場所まで奪われた___だがこのまま自ら死ぬことは許されない。 オレ様は、巻き込んだ弦狼と三日狼の帰る場所を作らなければいけない。) 「そうだな、薔鬼のお零れの地が負け犬のオレ様にはお似合いだ」 ▼▽▼▽▼▽▼▽ 一方、狼男の二人は妖狐の手枷をそれぞれ五個もつけられたまま、百又に何処かに連れていかれた。 「オレ達も国外追放で良いだろ」 「そーだぞ!大兄貴に会わせやがれっ!」 「あのねー!今誰かさんたちが滅茶苦茶やってくれたお陰で国は大変で少しでも人手が欲しいんだにゃ!大人しく一年社会奉仕活動したら会わせてあげるにゃ!」 「シャカイホーシカツドーって何だよー?!」 「妖兵の雑用と戦闘訓練だにゃ!」 「は?国を襲った相手にさせるのかよ?正気じゃないな」 「ワタシと同じくらい強い人材なんて中々いないからにゃー、着いたよー」 百又が狼男を連れてきたのは第一部隊の訓練場。 「「「「お待ちしておりました、総大将。」」」」 梅首、朝魚、水蜘、菊龍が敬礼して百又に挨拶する。傷は完全には癒えていないものの、もう動けるレベルまで回復しているのは彼らが優れた妖兵である証だ。 「げー、またお前らかよ」 「こっちの台詞ヨ...ハーッ...君の強さトラウマネ...」 「お前らが弱いだけだろー」 「その通りにゃ!じゃあ狼弟君はこの四人担当頼むにゃー!」 「ハアー?!」 「弱いと思うなら強くしてあげてにゃ!」 「コイツらじゃオイラの相手になんないけど?!」 「だから最初は札枷二個したままで素手でやってにゃ!それで暫くしたら一個外して、最終的に札枷無し双曲刀アリで一日バテずに戦闘継続できたら合格ラインかにゃー?」 「総大将、わたくし共お嫁様の教育もありますが」 「王が全治二ヶ月の大怪我でお嫁ちゃんたちはほぼ付きっきりだから教育は延期で大丈夫にゃー!」 「総大将♡あのお、アタイたちこの前一時間この子の相手するのも命懸けだったわよん?」 「伸び代があるってことにゃ!その代わり、戦闘訓練以外の時間は各々の仕事でこき使って良いから!千人力の体力無尽蔵の労働力だにゃー!」 「ッシャー!労働力ネ!じゃあまず私の巻物仕事で滅茶苦茶こき使ってやるヨ!」 「あら?!そういうことならアタイの治癒具倉庫整理もお願いしようかしらあ♡もう何ヶ月も整理してないのよん♡」 「うげえ!やなこった!」 菊龍と朝魚は逃げようとする三日狼の尻尾を引っ張り雑用に連れて行った。 ▼▽▼▽▼▽▼▽ 百又はそのまま弦狼を別の場所に連れていく。 「オレは?」 「月影宮殿が攻略されて朔狼様の存在を明らかに出来る様になった今、建国学の巻物は殆ど全て改訂が必要になったにゃー。だから貴方はワタシの無限にある巻物改訂の手伝いとー、」 百又は少し先にある、ぬりかべの妖力が込められた頑丈な部屋の前で足を止めた。部屋に入ると扉、また扉、何重もの扉を経て漸く室内に入る。室内には夥しいほどの積年積み重ねた傷が付いている。 この部屋は、千年前百又が総大将になってから使い続けた専用の訓練場。 「ワタシのタイマンの相手にゃ♡」 百又は訓練場の扉を閉めて封印してから、弦狼の札枷を全て外した。 「正気かよ」 「ワタシ、全力で戦闘したのなんて数百年ぶりだったにゃー!で、やっぱり定期的に全力出しておかないと錆びちゃうと思ったんだにゃー」 「手加減しねえぞ」 「したら怒るにゃ」 二人はあの夜のように、激しい蹴り合いをはじめた。 ▼▽▼▽▼▽▼▽ 全治二ヶ月の大怪我を負った王は、二週間経っても歩くので精一杯。さぞ不自由な生活をしているのかと思われたが、 「しょーちゃん!はい、おかゆ!」 「あーん♡」 向蛇にお粥をふーふーして食べさせてもらい、 「薔鬼様...果実が剥けました。」 「うむ♡あーん♡」 雪椿に果実を剥いて食べさせてもらい、 「薔鬼王様、痛すぎではありませんか?」 「うむ♡丁度良い♡」 桜天に脚を妖力治癒してもらい、 「王サマ〜、この予算これで王印押しちゃうね〜」 「うむ♡ありがとう♡」 狐紅に公務を代わってもらっていた! 嫁たちが至れり尽くせりで贅沢な日々を送っていたのである! (うーむ!正直天国すぎて一年くらいこの生活でも良いくらいだ!) ▼▽▼▽▼▽▼▽ 次回!初夜再挑戦! 今度こそ王の童貞卒業なるか?! ▼▽▼▽▼▽▼▽ 以下小ネタ。 小ネタ 【恋バナ】 「うっふん♡アタイは第一部隊治癒兵の朝魚♡恋バナ大好きマーメイドよん♡向蛇ちゃん以降、お嫁ちゃんと恋バナ出来てないからしていくわん♡」 「ねえねえ♡雪椿ちゃんは薔鬼王様の何処が好きなのん?」 「えっと...むろちゃんと一緒にいさせてくれるところですかね...」 「え?!待って、アタイ堂々と浮気話聞いちゃったわん!?どうしましょ?!」 「これはアタイの心の中に留めておくことにするわん♡気を取り直して、次は狐紅ちゃんに聞きましょ!」 「王サマの好きなところ〜?桜天と一緒にいさせてくれるところかな〜」 「待って待って?!お嫁ちゃんみんな浮気してるの?!」 朝魚は流石に心の中に留めるのは不味いと思い、王に聞くことにした! 「薔望王様...そのおん...お嫁ちゃんたちが浮気してたらどうされるのかしらん...?」 「うむ!知っている!嫁たち同士が愛し合っている!」 「ええ?!浮気されてお嫌じゃないんですか?!」 「我からしたら可愛い嫁同士の愛は子猫の戯れ合いを見てるようなものだからな!寧ろ眼福というものだ!我を愛してくれているならそれで良い!」 「なんて器のデカさなのかしらん!?王族って凄いわん!!!」 朝魚の恋愛観が広がった瞬間であった!

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