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《第2章》楓くんの自問自答 問1④
「……雪希さんって、付き合う前、『僕は性欲とかないから』って言ってませんでしたっけ? ああ、でも、そのわりにはなぜか、えろ漫画は普通に読んでましたよね」
「……二次元のキャラがえろいことしてるのを見るのは好きなの。僕自身は、自分の体でえろいことしたいと思ったことはなかった、って話」
「でも、オレにえろいことされるの、大好きですよね?」
普段、雪希から誘ってくることはまったくない。
誘っても拒まれそうになることはある。
それでも、いざ抱くとなると、すぐにとろとろになってしまうあたり、快楽への耐久度がかなり弱いのは明白だった。
「や、やっぱりこういう恋人、好きじゃない? キモかったらキモいって言って……! 気をつけるから!」
急に怯えたような表情を見せる雪希に、そういう話じゃないんだけどな、と思いつつ、楓は安心させるように頭を撫でた。
「オレも雪希さんとえろいことするの大好きなので、気持ちよくなってくれて嬉しいですよ」
止まっていた指の動きを再開させる。
先ほどまでよりも性急に、奥を開かせるべく押し広げた。
「や、ぁ……っ」
幼さの残る陰茎から、残っていた精液が溢れてくる。
この人は、触れば触るだけ、延々と快楽を享受しようとする。
本人の意志とは裏腹に、際限がないのだ。
根元を掴んで痛くならない程度に圧迫し、あらかじめ、二度目の射精は止めておいた。
「もうちょっとで挿れられそうなので、少し我慢しててくださいね」
「は……ぁっ、だめ……っ、かえでくんのゆび、きもちいい……っ」
雪希は聞いていなさそうな雰囲気だった。
一回出して思考がゆるんだのか、指だけで気持ちよくなろうとしている。
「そこ、もっとこすってぇ……っ」
「…………待ってくださいってば」
もうちょっと丁寧にほぐした方がいい気がするが、こうも煽られて平気でいられるほど楓も経験豊富ではない。
指を引き抜くと、すぐに滾る欲望を押しつけていた。
「あっ、ぅ……っ、ん……く……ぁ……おっきいの、はいってくる……ぁ……っ、ぼくのおしりのあな、ひろがっちゃうよぉ……っ」
付き合いはじめて最初の頃は喘ぎ声を控えていたらしい雪希だが、もともと、気分が乗ると饒舌になる人だ。
みっともなく喘いでも楓が気分を害さないことを知ると、とんでもない煽り文句をたびたび口にするようになった。
「は……っ」
挿入している側の楓の口からも、荒い息がこぼれる。
中は柔らかいくせに入り口はいつもキツくて、めりめりと押し込んでいる感覚がたまらない。
挿れるだけで、イきそうになる。
というか、イった。
「すみません……っ」
よく考えたらゴムをつけるのも忘れるほど夢中になっていた、と気づいたのは、出したあとだった。
狭い後孔の中が、生温かい精液で満たされていく。
いったん抜こうとしたら、雪希の脚が腰に絡んできて止められた。
「かえでくんの、あったかいね……きもちいい……」
とろんと潤んだ目が、続きをねだってきている。
「……気持ち悪く、ないんですか?」
「気持ち悪いと思ったら、そもそも男とセックスなんてしないよ……」
「それ、さっきの先輩にも言ってやりたいですね」
「あ……」
お互い様だったと気づいて、雪希がふにゃりと笑った。えっちの最中にしか見せない、子供みたいに屈託のない笑顔だった。
「ていうか、こんなに早く楓くんがイっちゃうなんて、珍しいね。かわいい」
「……あなたってひとは、ほんとに……」
挿入する前にイってしまった自分のことを棚にあげて可愛いなどと言い出す雪希に征服欲をそそられて、腰を前後にゆすってやった。
「あ……っ」
いつもよりもぬるぬるする。
それに、ゴムがない分、ダイレクトに雪希の体温を感じられて気持ちいい。
「なに、これ……きもちいい……あっ、ん……っ、あああ……」
雪希もいつもよりも感じているみたいだった。
揺さぶられながら、膝がガクガク震えている。かわいい。
それに、締めつけもいつもよりもキツくて、油断していると、すぐにまたもっていかれそうだ。
すでに裾が濡れているシャツをたくし上げて、胸も吸ってやった。
「あ、う……っ、むねは、だめぇ……っ」
「なんでですか。ちくび、もうたっちゃってるじゃないですか」
最初に触れた時から敏感だった乳首だが、抱くたびに愛撫するようになってから、すっかり性感帯として成長しているように見える。
触る前からぷくりと愛らしく膨らんでいるし、桜色に色づいて、男を誘っている。
舌先で胸の粒を転がしてやると、腰もビクビク震えた。
「らめぇ……きもちよすぎて、おかしくなっちゃう……」
完全に快楽の虜になってきた雪希は、全身どこもかしこも甘かった。
以前、この人は自分のことを『人類の恋愛対象の範疇にない存在』と言っていたことをふいに思い出して、楓はひそかに笑った。
誰かを好きになる資格すらなく、愛されたいと願うなど論外――そう信じ込んでいたはずの人を愛してみたら、こんなにも美しく甘く変貌を遂げたのだ。奇跡でも見ているような気分になる。
「大丈夫ですよ。先輩がおかしくなったとしたら、それはオレのせいですから」
なにも後ろめたく思う必要などない、と諭すように優しく髪を梳く。
こんなふうに誰かに触れるのは、楓の人生の中でも今までになかったことだった。
変わったのは、雪希ばかりではない。楓だってだいぶ変わった。
「かえで、く……」
「ん? なんですか……?」
問いかける声は、自分でも驚くほど甘い。
「このへや……なんかすごい、おとがひびくような……?」
「あれ? バレちゃいました?」
くすっと笑いながら、楓は腰を引いて、一気に奥まで貫く。
「あああ――ッ!」
ばちゅん、という派手な水音が、繋がりあった部分から響いた。
「防音室なので、もっと声をだしても平気ですよ、先輩。外にまでは響きませんから」
白濁と先走りとローションの音がまざりあって、ぐちゃぐちゃと卑猥に、雪希の中を掻き乱す音が響く。
「あ、ああ……っ、う……っ、だめ……っ、こえ、でちゃ……」
雪希は必死に声を抑えようとするが、タイミングよく楓に責め立てられて、喘ぎ声が止められない。
「先輩、またイっちゃいましたか?」
「や……っ、ん……わかん、ない……っ」
雪希の屹立からはまた白濁が溢れ出しているが、さっきほどの勢いはなく、たらたらとこぼしているような感じだ。
それでもなかなか止まることはなく、ずっとイき続けているようにも見える。
「先輩がこんなにかわいいことを知っているのは世界でオレ一人なんですね。最高です」
「ふ……ぅ、かえで、くんがこんなにどすけべだってしってるのも、ぼくひとりだよ……っ」
負けじと言い返されるが、下半身はぐずぐずなので、逆に煽っているようにしか見えない。
「そうですね。オレもオレがどすけべだってこと、今まで知りませんでした」
生まれてきてから二十五年。ようやく手にした至高の果実をじっくりと味わうように、甘やかしながら貪り続けた。
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