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《第2章》楓くんの自問自答 問2⑥
「……先輩、綺麗ですね」
「ど、どこが!?」
「いつもの先輩なのに、どことなく背徳的な雰囲気があって素敵です」
「楓くんのツボがどこにあるのかよくわからないよ」
さっきまでとは楓の目つきが違うことに気づいた雪希は、すでに逃げ腰になっている。
「……ビュッフェに行くんじゃなかったっけ?」
夕食ありの宿泊プランにしたので、このホテルのレストランで夕食を食べようという話になっていたのは確かだ。
「先輩、いま、お腹すいてます?」
「まぁ……それなりに」
「先に一回だけ……ダメですか? ビュッフェは二十一時までやってるみたいなんで」
「に、二十一時……?」
ちらりと部屋の壁に視線を走らせた雪希は、室内には壁時計がないことに気づいて、窓から見える観覧車の真ん中に表示されている時刻を確認する。
「大丈夫です。そんなギリギリまではしません」
安心させるように、楓はにっこりと微笑んで告げた。
「ていうか、カーテン、閉めた方がいいんじゃ……」
「こんな高層階の部屋を覗く物好きなんて、そうそういませんよ。双眼鏡でもない限り、視認するのも難しいでしょうし」
ふといいことを思いついた楓は、雪希の体を抱き上げて、カーテンが開け放たれた窓際に連れていった。
窓は広く、外の景色がよく見える。
昼間一緒に乗った観覧車がライトアップされ、数秒おきに違う色に移り変わっていくものだから、見ていて飽きない。
「先輩、高いところは平気でしたよね?」
「窓が閉まっていればへいき、だけど……」
せっかくなので雪希にもっと景色を楽しんでもらおうと思って、窓際に立たせた。
ついでにリモコンを操作して、部屋を薄暗くする。
「たまにはこういうのもいいですね」
そう言いながら背後から腰を撫で回しはじめた楓に、ひっ、と雪希は身をすくませる。
「こ、これはかの有名な、窓際プレイ……」
経験はないのに知識だけは豊富な雪希が、感動しているんだか怯えているんだかわからない口調で呟く。
「まって、だめ、窓ガラスに僕の姿が映ってるんだけど!?」
「いいじゃないですか。えっちで可愛いですよ」
優しく囁きながら、レースに包まれた股間の前側を撫でる。
「や……」
「あれ? 先っぽ、はみ出しちゃいましたね。ちょうどいいサイズだったんじゃなかったでしたっけ?」
軽いセクハラをされている間に雪希の股間はすっかり昂っていて、女物の下着ではおさまりきらないぐらいになっている。
「い、いわないでぇ……っ」
すでに呼吸も荒くなっている。いつもの下着とは違う布地に擦れる感触で、感じているのかもしれなかった。
「ほんとは、スカート履いたままの先輩に突っ込みたい気分だったんですが、それはまた今度にしましょうか」
耳朶を舐め、耳の穴にも舌先を忍ばせながら囁く。
「へ、へんたい……!」
「それに、せっかく用意してくれたんですから、あの……シリコンバストでしたっけ? あれで今度、パイズリしてもらうのもいいですね」
「やっぱり楓くん、巨乳が好きなんじゃないの……!?」
「普段のありのままの先輩もじゅうぶんに素敵ですが、いろんな先輩を見られるのも大好きですよ。先輩はなにをしても可愛いですし」
先っぽだけ顔を出した部分を、親指でこする。
腰が揺れ、悩ましげな表情をした恋人の姿が窓カラスに映っていた。
本気で嫌がっている反応ではない。
雪希もなんだかんだ言いながらも、普通ではないプレイも好きなのだ。
「そ、そろそろ飽きない……?」
付き合い始めたら楓はすぐに飽きてしまうのでは、と雪希は最初、疑っていたようだが、飽きもせずに求めてくる楓に、むしろ戸惑っているようであった。
「飽きませんねぇ。もっとたくさん、先輩といろんなことしたくなりました」
ショーツのウエストのゴムが屹立に食い込むのが可哀想なぐらいになってきたので、ずり下ろしてやる。
そのままショーツは足元に落ちたが、雪希が身じろぎしても片足首に絡みついたままで、卑猥な光景になっていた。
はやる欲望を抑えながら、ポケットに忍ばせておいたローションの小袋を開ける。
濡らした指を挿入してから、思っていたよりも柔らかいことに気づいた。
昨日、楓は仕事が終わってからそのまま実家に向かったから、雪希を抱いてはいない。
雪希は、昨日は出かけずに家で原稿をしていたはずだ。
ちゃんと進捗の写真を送ってもらって確認済みだから、間違いない。
「……先輩、もしかして昨日、ひとりでこっそり遊んでました……?」
声をひそめて問いかけると、ギクリと言わんばかりに雪希の肩が跳ね上がる。
「な、なんのこと……?」
白々しいにもほどがある。
普段ならもっとほぐすのに時間がかかる媚肉を、中指でやんわりと抉ってやった。
「やぁ……んっ!」
「あのバイブ、使ったんですか? ……怒らないので教えてください」
できるだけ優しい声で問いかけたつもりだったが、指の動きまでは手加減できなかった。
一番弱いところを強めにこすってしまって、雪希の膝が崩れ落ちそうになる。
「あぁ……ちが……っ、ん……ん……」
小声でぼそぼそなにか言っているようだが、声が小さすぎて聞き取れない。
雪希の体を支えて体勢を立て直してやりながら、楓は耳を寄せた。
「なんですか? もう一度言ってください」
「…………正直に言っても、嫌いにならない……?」
すでに半泣きになっている顔が、ガラスに映っている。
そんなにいじめたつもりはないのだが。
楓は苦笑し、小刻みに震えるうなじに口づけた。
「嫌いになりませんよ」
告げたのは、シンプルな言葉だけだった。
「…………ゆ、ゆびで、いじってただけ。ごめん、ほんとにごめん……」
ようやく答えてくれた雪希だが、罪悪感で満たされた顔はそのままだ。
「どうして謝るんですか?」
「……だって楓くん、肉食系のえっちな子、苦手なんでしょ? 地雷じゃないの?」
楓はなんともいえない表情になる。
それはもしかして、楓の過去の経験について言っているのだろうか。
「今さらですか……?」
過去の、好きでもないのにそういう関係になってしまったり付き合ってしまった相手と、雪希のことを同列に見ていると思われるのは心外だった。
「オレの気持ち、ちゃんと伝わってなかったんですか?」
振り向かせて、正面から抱きしめて、キスをする。
「先輩はオレの性癖ど真ん中なので、なにをしても嫌いになったりなんてしません。先輩が変わったんだとしたらそれはオレのせいなので、むしろ嬉しいぐらいです」
雪希でもわかりやすいように、オタク用語を使ってキッパリと告げた。
「せ、性癖……?」
「それに、今まで普通のオナニーすらろくにしてなかった先輩が、一人の夜が寂しくて後ろをいじるようになっちゃったのは、オレが毎晩のように先輩を抱いてるせいですよね?」
「そ、そうだよ……! 毎日毎日盛ってきて……なんか僕たち最近、セックスばっかりしてるよね!? だから、昨日は楓くんがいないから、眠れなくて……」
思い出したらムカついてきたのか、雪希の口調が強くなる。
「すみません……先輩見てたらつい……ムラムラして……十年分の性欲が一気に押し寄せてきている気分です……」
自分でもどうかしているとは思っていたので、楓は素直に反省した。
「十年分って……淡泊にすごしすぎた十代の頃の反動、みたいな……?」
「そうかもしれません。でも、先輩が嫌なら、週3……いえ、週5で我慢します……!」
「週3でも多いよ! 僕はもう若くないから、そんなに体力ないからね!? でも……締めきり前とかじゃなければ、その……」
毎日でもいいよ。
またしても小声だったが、今度はちゃんと聞き取れた。
顔が真っ赤になっているあたり、まんざらでもなさそうだ。
こういうところが、この人はたまらないのだ。
「先輩……やっぱりベッドでしてもいいですか?」
夜景は魅力的だが、それどころではない。この人の一挙一同を見ている方がよっぽど魅力的だ。
抱き上げて、ベッドに連れていくと、すぐに脚を開かせた。
「ま、っ、あぁ……っ!」
すでに蜜をたらし始めている陰茎を舐めながら、後ろに指を挿入する。一気に二本。
「せんぱい、今度オレが泊まりで帰らない日は、テレフォンセックスしましょうね……?」
「やだ、ぜったい、やだ……っ!」
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