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第3話 そして出会い

「いらっしゃいませ」  俺が仕事に慣れ一人でカウンターを担当できるようになった頃、作業着を着た3人のガタイのいい男が入ってきた。 「あれ、ここ…」 「何か、ヤバいんちゃいます?」 「いいよ、もう他行くの面倒だから」  店の立地上、間違えて入ってきたらしい。 「どうぞ。うち可愛い女の子はいませんけど、ノーマルな男性でも安心してお酒飲んでいただけますから」  営業上手なマサ君がソファーに案内している。 「お酒と料理が美味しい、普通の居酒屋だと思って下さい」 「いいじゃん。飲めりゃいいんだからさ」 「こんな熊みたいな男、襲われることもないしな」  3人の熊男は納得したらしく、ソファーに座った。  マサ君のコミュ力のおかげで、ソファーの方は思いのほか盛り上がっているようだったのに、しばらく経って熊男の一人がカウンターに座った。 「すんません、腹にたまるもんもらえますか?」 この人…なんか顔が死んでる。体も少し悪そうだ。腹にたまるものと言われたけど…俺はおかゆを作って出した。 「あれ?」 「胃に優しいものにしました」 「はあ…どうも…」  熊男は大人しくおかゆを食べ始めた。  熊男の様子をチラチラ見ながらコップを拭いていると、カウンターに座っていた、背の高いサラリーマン風の男が声をかけてきた。 「ねえ、仕事終わったら俺と遊びに行かない?」  この男はよく店に来てカウンターに座る。やっぱり…俺に気があったんだ。ノブちゃんもマスターもいないのに…どうしよう。 「俺、上手いよ。気持ちよくしてあげるからさ」 「結構です」 「いいじゃん、一回試してみなよ」  布巾を持った方の腕を掴まれた。どうしよう、ここで振り払っていいんだろうか…いや、仮にもお客さんだし… 「おい、待てや」  俺がどうするべきか悩んでいると、おかゆを食べ終わった熊男が立ち上がった。 「ええ度胸やな。俺の男に手ぇ出すんか?」 え? 「なんやったら、譲たってもええで。まあ、あんたが生きとったらの話やけどな」 鋭い目で見下ろしながら、ボキボキと指を鳴らす。 「とりあえず、外出よか」  大きな熊男に上から睨まれ、真っ青になったサラリーマン風の男は震えながら財布を取り出した。 「いえ、あなたのカレシなら俺はもういいんです。すみません。由羅君、カレシがいるなら言ってくれなくちゃ。これ今日のお会計ね」  ガタガタと席を立ち、多めのお金を置いて逃げるように店を出て行った。  よかった…あの様子ならもう来ないな…いや、よくない。今度はこの熊男が… 「あの…俺…」 「おかゆ、もう一杯くれる?」 「はい?」 「おかゆ、美味かった」 「はあ…」  この人は俺を助けてくれたんだろうけど…本業なのかと思うくらい堂に入って怖かった。ところが、おかわりのおかゆを受け取った熊男は、少し微笑んでいて…その悲しげな微笑に俺は胸が痛くなった。  その後、おかゆを3杯たいらげた熊男はソファーに戻って行った。 「城さん、もうやめといて下さい。帰りますよ」 「まら、ろむんらよぉ」 「何ゆうてはるんですか、これ以上飲んだら吐くでしょ」  熊男は二人の熊男に肩を貸して立ち上がった。 「すんません、会計お願いします」 *** 「ありがとうございました」 「悪いけど、タクシー呼んでもらえます?2台」 「はい」」   軽く会釈した熊男は両肩に熊男たちの腕を引っ掛け、両手にかばんを持って出て行った。   外は小雨が降っていた。俺は店にあった傘をさし、熊男を追った。 「あの…この傘どうぞ」 「ああ、ありがとう」 「かばん持ちましょうか?」 「いや、大丈夫」    俺は背伸びをして、背の高い熊男を傘の下に入れた。 「2台、呼んでくれたやろ?」 「はい」 「君が濡れてしまうから、もう店に戻り」 「いえ、大丈夫です」 「あかん。風邪ひくから中はいり」 「じゃあ、傘は持って行って下さい」 「俺は濡れても大丈夫。気持ちだけいただいとくわ。ありがとう」 「そうですか…ありがとうございました…」  俺は頭を下げて大人しく店に戻った。 店に戻るとマサ君が駆け寄ってきた。 「由羅君、あの人たち帰った?」 「はい」 「あの腕、素敵だったな…嫌がられると思って触れなかったけど」 祈るように手を組んでうっとりと話すマサくん。 「カウンターに行った男が一番タイプだったのに…全然しゃべらないんだもん。由羅君、しゃべった?」 「はい、少しだけ…」 「いいなぁ。どんな感じだった?」 「俺は何とも…」 危ない仕事をしてそうな人だった…怖そうだけど、優しそうで悲しそうな人だった。

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