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第14話 芽生え
2月に入り、由羅は行きたい養成所を決めた。試験に実技があり、その才能によっては学費を免除してくれるから。自分に才能はないと思っているけど、もしも、万が一ということがあるし、免除してもらえなくても奨学金の申請ができると聞いてそこに決めた。
とりあえず歌を練習しなくてはと、一人カラオケボックスに通う。ギターは基礎からきちんと教えてもらおうと思い、あえて手を出さなかった。
カラオケから帰り、夕飯の支度をしていると玄太が帰ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま。これ土産」
テーブルに置かれた紙袋。
「何?」
「開けて食ってええで」
玄太はバスルームに入っていった。
紙袋の中はチョコレートだった。そういえばバレンタインだ…と、自分が何も用意していないことに気づく。でも俺も男だし、俺が玄さんにチョコをあげるのも変だよなと、由羅は考え直した。
いかにも義理なチョコが3つ。そしていかにも高級そうなチョコの箱が1つ。由羅の頭に不安がよぎる。
玄さん…告白されたんだろうか…
チョコの箱を見つけたまま由羅が固まっていると、玄太が濡れた髪を拭きながら出てきた。
「それ、美味そうやろ。…あれ、由羅?」
「え、うん…そうだね」
玄太の声に我に返った由羅は慌てて紙袋を下げ、夕飯をテーブルに並べ始めた。
食事の後、由羅は紙袋からチョコを取り出す玄太の手元を見ていた。この様子なら、まだ告白されてないようだけど…中にカードが入っていたら?
由羅の心配をよそに玄太はバリバリと包装紙を破った。カードは入っていなかった。
「めっちゃ上品やな」
高級感のある箱に6粒のチョコレートが入っていた。
「こんなん初めて見たわ」
不思議そうにチョコを眺めた後、一つつまんで口に運ぶ。
「あっ!」
由羅は思わず声を上げた。
「え、何?」
「何でもない…」
カードは入っていなかったけど、これは玄さんを想って特別に買ったチョコだと由羅は直感した。玄太同様、由羅もこんなチョコは初めて見た…だけど特別な気持ちで買ったものに間違いない。だから…食べないで欲しかった。
「うーん…美味いんかな…」
甘いものがあまり得意ではない玄太にとって、特別だろうが何だろうがチョコは甘かった。
「由羅は好きやろ。全部やるわ」
チョコは好きだけど…由羅はそれどこではなかった。
「これ、誰に貰ったの?」
「会社の経理の藤倉さん」
「何歳くらいの人?」
「俺と同じくらいかな…」
それなら…絶対玄さんを狙ってる…
「由羅?食わへんのか?」
チョコレートを紙袋にしまう由羅を不審に思った玄太が聞いた。
「明日にする」
「そうか…」
「シャワー浴びてくるね」
家に帰って一度シャワーを浴びたにもかかわらず、気持ちをすっきりさせたくて由羅は再びシャワーを浴びた。そして布団に入ってからも…顔も見たことのない藤倉が気になって、なかなか寝付けなかった。
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