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部屋に戻ってきたら、電気が消されて布団の枕元のランプだけがオレンジ色のぼんやりした灯りを広げていた。庭に面する窓は障子戸。
アオくんは布団の上で丸くなって、すうすう寝息を立てていた。
「……なんだよ、寝たのか」
横に腰を下ろして、白い頬にかかる髪を一筋、耳の後ろへ流してやる。
まっすぐな睫毛がランプに照らされ影を落とす。
眉を下げて、安心しきって眠る横顔。薄く開いた唇。
寝顔を見下ろしながら耳のあたりを一度撫でてそのまま頭に手をあてる。
柔らかい細い髪。
アオくんも軽く風呂に入ったのか、少ししっとりとしていた。
指の間をするりと滑る。形のいい後頭部、薄い耳殻。
「……待ってるって、言ったじゃん」
呆れたように小さく笑って、ため息をついてからこめかみにキスを落とした。
そのまま寄り添って横になろうとした、とき。
「ぉわッ……!?」
浴衣の肩口をぐっと握られて、布団に引き倒された。
アオくんの俯いた顔、口角を上げた唇だけが見えて、そして先輩の腹の上に跨がってくる。
「……待ってましたよ? ちゃんと」
胸に手を突いて見下ろすアオくん、弧を描く唇がランプに艶めく。
「寝たふりかよ」
くすくす笑いながら頭を下げて、アオくんは先輩にキスをする。下唇をちゅっと吸い上げて、すぐ離して、また角度を変えて口付ける。
アオくんの後頭部に手を添えて、先輩も口角を上げた。
「……どうした、積極的だな?」
キスの距離で唇を掠めさせながら呟くと、ふふ、と笑ってアオくんは身を起こした。
「ねえ、先輩」
先輩を見下ろしながら、アオくんは少し身体を倒して、後ろ手で先輩のそこを撫でる。
「先輩……」
撫でる手つきがどんどん大胆に、形がはっきりしてくると浴衣の上からぎゅっと掴んで手首を返すようにこすり上げる。
笑うアオくんの唇。
ランプの光が揺らめく淡い瞳も、弧を描く。
ぞくぞくと欲望が背を駆け上がって、先輩も笑ってしまう。
こいつから誘ってくるなんて。
腹の上に柔らかい尻の温かさ、跨がっている細い腿を浴衣の上から大きな手で撫でるとじわりと体温が伝わる。
「先輩、」
唇を笑んだ形で、見下ろしながら、アオくんは腿にある先輩の手を握ってやわりと退けた。
そして自分で浴衣の裾を両手で摘まむ。
「……しよう?」
するりと持ち上がった浴衣の裾、白い腿が現れて、アオくんは下着をつけていなかった。
勃ちあがったペニスがひくりと揺れる。
不敵に微笑んでいるのに、耳の先が、真っ赤。
先輩は信じられない光景に頭が熱くなって、笑ったまま、は、と短く息をついた。
自分の下半身も、一気に震えるほど張り詰めたのを感じる。
アオくんに手を伸ばした。
「……上手に誘って、いい子だな?」
うなじを掴んで引き寄せて、深いキス、唇も舌も全部自分のものにするような。
アオくんも目を閉じて先輩の舌を追う。
唇を離して、名残惜しそうに唾液の糸が切れて、アオくんは枕の下に手を突っ込んでコンドームを取り出した。
「先輩、持ってきすぎじゃない? 箱であったけど」
笑んだ唇が小袋の端を噛んで、片手でそれを破る。
あまりにも挑発的で、先輩を見下ろすアオくんの淡い瞳は欲情の色に揺らめいている。
「……足りないかもしれん」
「ばかじゃないの」
するするとアオくんは足元に下がって行って、先輩の反り返るほど勃ちあがりきったそれにゴムを被せた。
「……もうこんなに……、咥えてあげようかと思ったのに」
「え、して」
「あとでね」
アオくんはまた先輩に跨がって、少し身を仰け反りながら、腰を落としていく。
慣らしもしていないはずのそこから、ぐちゅ、と音を零して、先端が埋まっていった。
息を漏らして、アオくんは目を閉じて天井を仰ぐ。
「おい、いきなり……」
「……待ってた、って言ったじゃないですか」
なんだよそれ。
先輩はくらりと目眩がした。
俺が風呂入ってる間にひとりで、準備してたのかよ、自分でローション塗り込んで、開いて?
……いい子すぎるだろ。
「ん……」
ゆっくり根元まで飲み込むと、アオくんはぶるりと一度震えてため息をついた。
やはり少しきついのかも、黙って動かずに目を閉じて、先輩のそれが馴染むのを待っている。
おしりの中いっぱいで感じる、先輩の熱、硬さ。その形。満たされて、でももっと欲しい。もっと熱くなるの、知ってるから。
アオくんはゆるく腰をゆすり出す。
「あ、……ん、ん、先輩っ……」
仰け反って、浴衣の合わせが緩んで喉を曝して、中をきゅうきゅう締め付けながら坦々と律動する。
目を閉じて没頭している姿は自慰に近い、アオくんのペニスからとろとろとカウパーが溢れてランプに照らされる。
震える手、先輩が掴んで、指を絡ませ両手を握る。
それを支えにしながらアオくんは腰を大きく動かした。
「あっ、あ、せんぱっ……、ねえっ」
「なに?」
目を閉じていたアオくんが、息を荒げて、ゆっくり震える睫毛を持ち上げる。
淡い瞳が、とろりと見つめて、
「せんぱい……きもちいい?
ちゃんと、おれ、きもちよく……」
先輩のこと、きもちよく、できてる?
縋るように、小さい声で聞いてきた。
眉を下げて、滲んで揺らめく淡い瞳。
先輩はたまらなくなった。
それ。それって。
お前が珍しく跨がってきたのは、お前がヤりたくなったからじゃなくて。
プライド高いお前がひとりでパンツ脱いで、ひとりでローション仕込んで、ひとりで準備してたのは。
腹筋に力を入れて上半身をがばりと起こす。
両手を繋いだまま引き寄せて、押し付けるように強くキスをした。
「……最っ高に、きもちいいよ」
低い、切実な、掠れる声を耳元に落とす。
そして思いっきり腰を突き上げた。
「あッ!? あっ、あ、ぅあっ……、うう~……っ」
ガツガツ突き上げられて、たまらずアオくんは髪を振り乱す。
「お前もちゃんと気持ち良く、なれよ」
腰を打ち付けながら、先輩はぎらりと笑んで、繋いだ両手に力を込めた。
「せんぱいっ、だめ、あっあ、やだ、タオル、取ってぇ……っ」
「タオル?」
「布団、汚しちゃ……、ん、んあっ」
ぐり、と中を抉られて、アオくんのペニスはふるふる震えて先走りに濡れて、今にも溢れ出しそう。
「しょうがねえな」
そう言って先輩はタオルじゃなくて、ゴムを手に取る。
アオくんのに被せて、でも根元まで下ろさず半端に亀頭の下で留めた。
「なにして……」
「今日お前、絶対潮吹く。断言する。いっぱい出していいぞ? 布団なんか気にするなよ」
ニヤニヤ笑う先輩に、アオくんは真っ赤になった。
「……っ誰がっ!! ふっざけんな、」
「うるせえな、素直にイけよ」
先輩はアオくんの腰を両手でがしりと掴んで、スパートをかけるみたいにまた強く激しく、突き上げた。
胸を仰け反らせて喘ぐアオくん。浴衣が乱れて白い肩の下にずり落ちる。ピンク色の乳首が覗いて、そこはまだひとつも触ってないのに突き出した胸の上でツンと上を向いて尖っていた。
先輩は的確にアオくんのいいところばかり叩きつけるように抉ってくる。アオくんは全身びりびり快感に痺れて、白い内腿がびくびく痙攣してきた。
顔も首筋も真っ赤に染めて、大きくしてしまいそうな声を抑えようとして、抑えられなくて。快感が張り詰めて張り詰めて、
「………ッッッ、アっ!」
こらえられず高く叫んだとき、先っぽに被せたコンドームがぴゅ、ぴゅー、と震えて膨らんだ。透明な液体が溜まっていく。
それが出てもまだ、アオくんの中がきゅうきゅう、先輩に甘えるように縋りつく。
快感は細腰の中でどんどん渦巻いて大きくなって、ああもう、溢れてしまう、あとちょっと、そこをこすられたら。
「あ、あ、あ、せんぱいっ、もっ……もう、イくッ……、イッ、ん~~ッ……!」
アオくんの中でなにかがはじけた。
ぎゅうとおしりの中がきつく痙攣して、アオくんは目に涙を浮かべながら絶頂する。
コンドームが今度は白く、また膨らんだ。
締めつけにたまらず、熱い疼きを叩きつけるように最後一度大きく腰を打ち付けて、先輩も射精した。
強い射精、びゅくびゅくとまだ快感が続く。先輩は目をぎゅっと瞑って前からアオくんをきつく抱き締めた。
アオくんも絶頂の余韻で脚の痙攣が止まらない。
しがみつくように抱き締めて、汗ばんで熱を持った皮膚を隙間無くくっつけあって、互いが溶け合うような感覚。
頭を突き抜けていった快感でくらくらしながら、跳ねる心臓がどちらのものか分からなくなる。
しばらくその鼓動を感じてから、はあ、と息を整えてゆっくり身を離した。
先輩が腰を引いてペニスを抜くと、アオくんはぶるりと震えて鼻にかかった声を小さく漏らす。
先輩の肩に手をかけたままとろりと涙目で名残惜しそうに、黒い瞳を見つめ上げた。
せんぱい、と熱に浮かされながら、キスを、しようとすると、
「やば、すげー出た」
先輩は外したゴムを真剣に見つめて掲げてきた。
「……ッッ! 見せんなっ!」
アオくんは目を見張って顔を真っ赤にする。
「いやだってこれ、たぶん今までで一番多いぞ、やっぱ今週忙しくて全然だったもんな、溜まってたんだな……」
ゴムを結んでまだそれを見つめながら感慨深く語る先輩に、黙ってくださいよ、とアオくんは呆れて天を仰ぐ。
「お前も、ほら」
ニヤニヤ笑う先輩が、アオくんのペニスからゴムを外した。それもきゅっと結んで、
「いっぱい出したな?」
アオくんの目の前に白濁の混じった潮風船を掲げて、誇らしげに笑う。
「~~~~~ッ! しねっ!!」
眉を吊り上げて真っ赤になったアオくんが拳で先輩の肩を叩くと、いってえ、と言いながら先輩はその手を掴んで引き寄せた。
おもむろに指に、キスを落として、
「……気持ちよかった?」
目尻を赤くしたたれ目が微笑んで、アオくんを見つめる黒い瞳。
ランプのオレンジの光が瞳の中で揺れる。そこにいとしさも滲む。
アオくんはきゅっと眉を寄せ、悔しそうに唇を引き結んだ。
ずるくない? 先輩。
何も言えなくなって頬を赤くするアオくんを見て、先輩はハッと笑い、ぐしゃぐしゃと上機嫌に頭を撫でた。
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