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第7話 七尾の事 鮫島の事

 ロジャーをこの倶楽部に紹介したのは七尾という男だった。ロジャーは量子物理学の研究者。  七尾は宇宙工学の研究でイギリス、バーミンガムにいた。  ロジャーはモデルのユーツーとのつらい恋の後、愛してやまないミトと出会って今は幸せだ。  ロジャーと七尾は同じ学者同士、そしてお互いにゲイだと知っていた。バリタチの二人は、お互いを尊重して篤い友情を築いて来た。  二人が結ばれる事はなかった。  その時の七尾の相手だった鮫島はリバだった。 ミカドと同じ男娼上がりで客の要望に応えてネコにもタチにもなれる。受けも攻めもご要望に沿う売れっ子だった。  鮫島は七尾と結ばれてから、宇宙工学の研究者の七尾についてヒューストンにしばらく暮らした。別れの理由は七尾の急逝だった。  デンマークと日本のハーフの七尾は、持病を抱えていた。七尾が亡くなって、一人日本に帰って来た鮫島は、また、奥の御老人を頼った。  慟哭の日々を送っていた鮫島にご老人は生命の理を教えた。それで何とか立ち直った鮫島はまた、ここで働く事にしたのだった。  その時から鮫島の時は止まっている。彼は年を取らない。ご老人と同じだろうか。  奥のご老人はその正体を知られずに、いつもこの倶楽部を徘徊している。  むかしからずっと老人なのだった。ご老人が全部で何人いらっしゃるのか、も謎だ。  毎年十月には出雲に出かける。稔彦たちにも会う。 「命というのは無くならないのだよ。朽ち果てるのは肉体だけ。死は繰り返す命の休憩時間だ。  命は無始無終。始め無く終わり無し。 だが同じ人と巡り会う確率はほぼゼロだ。 それで生き物は悲しむのだ。今生の別れだから。  鮫島よ、悲しむでない。命は続くのだから。」 「でも、同じ人には二度と会えないのですね。」 「会えないというより確率が、天文学的に少ないのだよ。そして何より記憶が消えている。  もし、出会っても気づかない。それが死ぬ事の絶望なのだろう。」 「寂しいです。七尾に会いたい。 生きてあの熱い胸にもう一度抱かれたい。」  この倶楽部に関わるとあまり年を取らなくなるようだ。気のせいかもしれない。  その夜、摩利彦と月夜見は、鮫島と夜更けまで他愛のないトランプゲームをして過ごした。  そのトランプゲームが実におもしろく、摩利彦と月夜見は夢中になった。  ただの神経衰弱だった。なぜかみんな知っている、すごい名前。

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