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第9話 女装子

 陽の光がベランダから差し込んできた。摩利彦はなんだかホッとした。帰って来たのは朝方だったからまだ眠い。今はもう昼過ぎだ。 「月、何だか眠るのがもったいない。 どこか,,行こう。」  摩利彦は変な時間の流れには慣れている。今まではそんなに睡眠時間を必要としなかった。  何だか今日はぼうっとしている。 (あんなに激しいセックスをしてミカドさん大丈夫かな。俺、身体中ガタガタだ。) 「稔彦は寝かせておいて、俺たちはどこかに行く?」  二人で出かけて来た。カッコいい若者だと自負している。 「普通の人はこの時間は活動してるんだね。 俺たち、普通の人に知り合いいないね。」 「これから出来るさ。探しに行ってみよう。」  あの倶楽部の近くに来た。まだ倶楽部は営業前だ。倶楽部と背中合わせに神社があって、境内は公園になっている。ベンチを見つけて座る。 「犬でも連れてたらカッコつくのにな。」  そんな事を言ったら、向こうから女の子が犬を連れて歩いて来た。犬は自分でリードを外してこっちに走って来た。  摩利彦はいつも厩の掃除をしてアオの世話をしている。動物が好きだ。犬がしっぽを振って飛びついて来た。 (俺って馬臭いかな?)  犬は、顔はチワワだが可愛いくてデカい。 「わっ,俺、犬怖い!」 「月、チワワだよ。可愛いよ。」  女の子が大声で呼ぶ。 「小次郎!勝手に走らないで。」 女の子が追ってきた。デカいチワワをベンチの摩利彦が抱き止めた。筋肉質でしっかりした体の犬は重量級だった。 「わっ、重たいなぁ!」 「ごめんなさい、うちの小次郎が。」 「大丈夫、可愛いねぇ、キミの犬?」 「ええ、いつもこの時間は散歩してるの。」  ベンチに並んで座って犬と遊んだ。 ノーリードになった犬は,小枝を投げると嬉しそうに走って取ってくる。意外に、月が夢中で枝を投げてやってる。 「小次郎っていうの? 犬の名前。」 「そう、小次郎は人の言葉がわかるのよ。」 「俺、摩利彦。須佐摩利彦。こいつは弟の月夜見。キミは?」 「私は沼田尊(ぬまたたける)」 「タケル?男みたいな名前だ。」 「ええ、身体はまだ、男だから。」 「ちょっと待てよ。俺、寝ぼけてるのかな。 昨日から綺麗な男が多すぎる。」 「綺麗って・・ありがと。」  信じられない、女装子だ。 あの倶楽部では昨日から倒錯の世界が続いている。心なしかこの神社の境内も不穏な空気が流れているようだ。 「私、あなた達を知ってる。 おじいちゃまが言ってた。出雲の人たちね。」  もう身バレしている。

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