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第28話 尊
「ボクは学生だったんだ。
ロジャー先生の物理学教室。五十嵐組。」
「ロジャー先生は聞いた事がある。
大学の教授だよね。尊もあの大学?スゲェ。」
「そう、でも礼門と劇的な恋をして大学は辞めちゃったの。一緒に暮らすため。」
「へぇ、礼門先生に会ってみたいな。」
「呼ぶ?」
摩利彦は慌てて
「いや、今日はいいよ。また,今度。」
尊が何かの赤い液体をグラスに注いで
「どうぞ、召し上がれ。」
断れない雰囲気で飲み干した。血のように真っ赤な飲み物は美味しいマデラワインだ。知ってる味に安心してお代わりをもらった。
「尊は何でサドになったの?」
いい気分で口が軽くなった月夜見が訊いた。
「元々はマゾだったの。
子供の頃、親に捨てられて、よくある話よ。
施設でいじめ抜かれた。女っぽいから女男って言われて。」
その時,子供心に、痛みを自分で支配する事を覚えたそうだ。施設のいじめっ子は、酷い事をすると喜ぶ尊を気味悪がって近寄らなくなった。
尊の必死の処世術だった。
大人になるにつれて別の意味で尊を餌食にしたい変態が現れた。教師もだ。
「ボクは勉強がしたかった。大学に行きたかった。中学の頃から身体を売ることを覚えたの。
お金を稼いで大学に行きたい。生命の神秘を学びたい,って思った。こんなボクでも生きる価値があるのか?生まれた意味を知りたい。
もっと稼げる方法を模索した。世の中には変態が溢れてる。」
尊の綺麗な身体には背骨に沿って二列並んだ酷い火傷の痕がある。
「最初はタバコだったけど、興が乗ると鉄の棒を熱して焼くのよ。死ぬほど怖かった。
自分の肉の焦げる匂いがする。今でも焼肉が食べられない。
これは痛みじゃ無い、快感なんだって思い込もうとした。歯を食いしばって奥歯がボロボロになった。
そんな事に高いお金を払ってくれる変態がたくさんいるのよ。」
尊の話は胸が悪くなる内容だった。
摩利彦と月夜見は、尊のために泣いた。
「でもサドの王と言われる礼門がボクを救い出してくれたの。」
尊のために大金を使い、歯と身体を治してくれた。サドの王はなんと尊にだけはマゾになった。屈折した愛情。
「二人になると礼門か鞭打たれる事を望む。
礼門を愛してるわ。
ボクが誰かに抱かれると嫉妬で死ぬほど苦しむの。礼門はそれが好きなのよ。」
浮気しましょう、と言われて二の足を踏む。
どこかで礼門が見ているのだ。
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