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第39話 忘れないで

 あの沢井と波子が事故死して霞会と名乗るガキどもは解散して散り散りになった。 「たまにはお参りして欲しいって事だったのかな? 忘れないで、って。」  狐が言った。幽霊が化けて出て来たわけじゃ無いだろう。霞町の地縛霊か?  住む所が無くなった良太はあの団地に戻って来た。ここを片付けて引越しの準備だ。  ここで今まで暮らしていたのだ。高校の制服もある。18才を超えたから一人で生きていかなければならない。  団地はもう閉鎖されているはずだ。来年の取り壊しまで、入り込めないように塞がれている。 「え?全然暮らせるよ。俺のいる棟はライフラインもちゃんと活きてる。  電気、都市ガス、水道水、全部普通に使える。」  良太はなんの疑問も抱かず長年住んだ団地の 一室に帰って来た。  上の階にも人の気配がする。覗いてみると知ってる顔があった。 「よおっ、パクられたんだって? 俺がヤク片付けてやったんだよ。ガサ入れが 入っても何も出なかっただろ?」 「ああ、荒居さん助かりました。」 (こいつ、人の家に勝手に入りやがって、 やばい奴だな。へっ、盗める物なんか無かったってか。)  良太は、顔馴染みの荒居がまだこの団地にいるのに驚いた。良太の安物の腕時計を嵌めて、良太の偽ブランドのサングラスを掛けている。 「荒居さん、それ俺の。 ところでまだここにいるんですか?」  荒居は、闇バイトの斡旋リクルーターだった。 ネットの広告を見て集まって来た若者を苦海に沈める。時給三万円とか,あり得ないのに面白いほど応募がある。  昔は女を売り飛ばしたが、今は日本人の男が売れる。流暢な日本語が話せて臓器も使えるから。 「パスポート持ってるか? ミャンマーとカンボジア、海外旅行がてら、向こうで稼げるぜ。」  パスポートがなけりゃ、コンテナ船で密航する事も出来るという。帰る事は想定していないらしい。ちょっと考えれば分かりそうなもんだ。 「良太みたいな自由な奴を欲しがってるんだよ、 ボスが。」  ボスはどうやらC国人のようだ。C国の経済特区。場所はあの三角地帯。タイ、ミャンマー、 ラオスの山岳地帯。麻薬製造の無法地帯だ。 (怖え。行ったきり帰って来れる保証はない。 この団地でもずいぶん向こうに行った奴がいる。) 「おまえもこの団地、期限切られて出なくちゃ、だろ。」

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