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第43話 軽音部

 たいして活動していない名ばかりの軽音部。 翔と付き合っているつもりの花沢登美は、いつも翔に付いてくる。 「あたし、光一と冬美が羨ましい。 高校生で結婚なんて素敵だよね。」 「別に。ウザいだけだな、俺は。」 「海斗に聞いてないよ。ねえ、翔はどう思う?」 「光一すげえな、って思った。勇気あるな。 光一は男が好きだと思ったんだけど。」 「えっ?それなのに冬美妊娠させたの?」 「どっちもイケる奴か。」  登美の前で言いにくそうにしていた海斗が 「本当は好きな奴がいたんだよ。」 「ああ、知ってる。冬美が仕組んで、光一に無理やりやっちゃったんだって。噂になってた。」 「男は無理やりなんてされないでしょ?」  人の噂はいい加減なものだ。勝手に一人歩きする。  この間のホストクラブ見学会の後、みんなは浮ついて夜の世界に憧れ出した。  働きたいと言う仲間たちを、円城寺社長が お試し入店させた。みんな嬉々としてホストになっている。    タスクは今一つ乗り切れない。無性に月夜見に会いたくなった。売れっ子ホストに、負けるとも劣らない美貌。繊細な雰囲気。黒髪。  見つめる黒い瞳。 (月夜見ならスカウトしたい。いや、やっぱり 誰にも見せたくないな。)  学校に行けば顔は見られる。だが、距離は縮まらない。いつも摩利彦が邪魔してくる。 「軽音部って、あるんだね。」 月夜見に聞かれた。珍しく話しかけられた。 タスクは高校を仕切っていると思われている。 「ああ、たいして何もやってないみたいだけど。」 「俺も入れるかな?」 「大歓迎だな。何かやれるの、楽器?」 「うん、子供の頃からピアノやってた。」 (ホントは琵琶とかもやってたんだけど。 弁天ちゃんから習ったなんて言えないよ。)  お山にはなぜか、和楽器が多かった。難しくて全然出来ない。音階も覚えられない。 「なんか、バンドとかやると女の子にモテるって聞いたから。」 軽い理由だった。 「何もしなくてもモテてるじゃん。」    軽音部の部室に月夜見が入って来た。 「こんちは。俺も参加していい?」 「なんだよからかいに来たのか?」 「違うよ。入部希望。ピアノなら出来るかな。」 「部員は二人しかいない。役割決めてない。」 登美が思い出したように話に割り込む。 「あたし、帰らなくちゃ。翔、送って。」 (俺かよ。めんどくせえな。) 「じゃ、帰るから。海斗が一応部長だから。」  部室に月夜見と海斗が残された。 「一応、ピアノがあるよ。 調律してないけどな。」  狭い部室で翔のギターを抱えた海斗の横をすり抜ける。月夜見はいい匂いがした。  立ち止まって目が合う。 「ごめん、狭くって。埃っぽいだろ。」  ピアノを開けると意外と中はきれいだ。 試しに順番に鍵盤を押して見る。低い方のミの音がよく出ない。 「一番使うのに、な。このミ。」  隣に並んで弾いて見る。 「海斗もピアノ弾くんだ?」 「少しだけ、な。」  月夜見はドキドキがおさまらない。手が触れるだけでビクッとする。 (摩利彦なら笑うかな。)

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