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第51話 探偵
しばらく、あの荒居は出てこない。
あの媚薬香水が祓ってくれたのか。
タスクは叔父貴の雇っている探偵から報告書を受け取った。あの占い師には見えていた憑き物は探偵には見えなかったようだ。
報告書には悲しい荒居クマオの生い立ちが書かれていた。もう亡くなって久しい。何を勘違いして出て来たのか?
クマオの故郷は群馬の山奥、文字通り熊の出るような山だった。気がつけば父と二人暮らし。
母はクマオを置いて山を降りた。山での生活は過酷だったから、母は出て行った。
クマオが中学を出る頃、山での怪我が元で父親はあっけなく死んだ。
中学を出ると僅かな金を持って都会を目指した。新宿をうろついて、ろくに食えない数日の後、その頃新宿を占めていたT会のチンピラに拾われた。飯を食わせてくれた。初めて食べた牛丼は美味かった。
田舎の中卒は、ピュアなまま、パシリに使われ
紆余曲折の末、ヤクの売人になった。
「父ちゃんも母ちゃんも生きていても何にもいい事はなかったべ。
おいらはもっといい思いをしたい。
ヤクザの多部さんについて行こうと思うんだ。」
ドン臭くてルックスもパッとしない、背の低いクマオは潰しが利かなかった。
T会の多部は、そんなクマオをいいように使った。ヤクの売り上げが少ないと殴った。
腫れ上がって青タンを作った顔を見て
「こんな不細工、顔が潰れたって、どうでもいいだろ。」
クマオは人生はつらい事しか無いのを知っていた。そして闇バイトのリクルーターになる。
目を付けた男は必ず外国へ送り出す。
臓器を使えそうな奴は逃がさない。
そうやって多部さんから目をかけてもらえるようになった。
探偵の報告書には
「頼れる人が誰もいなかった。」
孤独な男だと書かれていた。恋人がいた事も無かったようだ。
ヤクの売人になって、ヤク中の女がヤク欲しさに抱かせてくれる事があった。
クマオは優しくされるとすぐに好きになってしまう。しつこく付きまとう。逃げる女は強姦して殺した。殺した女の怨霊がたくさん憑いていた。
キリがない。恨みの連鎖。そしてクマオは人に取り憑く。クマオが殺した成仏できない魂は、今でもヤクを探して漂っている。
「月夜見には見えるんだよなぁ。」
タスクは妙に感心した。
哀れなクマオの魂を鎮める祓言葉を月が唱えている。摩利彦も祓言葉を唱える。
二人とも神職なのだ。
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