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第52話 迷える魂

「ねえ、おじいちゃん、魂ってなに? 生命のこと?」  小さな子供がするような質問だった。 摩利彦と月夜見はあの倶楽部の老人を訪ねた。 「この前少し教えてくれたけど、人は死ぬんだよね。」 「生きとし生けるものは皆死ぬ。」 「摩利彦は死ぬ事をどう考えているのじゃな?」 「うん、ジャーンってそこでおしまいになる。 お芝居の緞帳が降りて終わる感じかな。」 「人間が頭で考えるより長い時間、世界は存在している。あまりにも長い時間は、もうあちらとこちらの区別がなくなってしまう。  それくらい長い時間のことじゃ。」  ご老人は平べったい紐を取り出して片方を捻って両橋を繋いだ。 「この表面に指を置いて辿ってご覧。」  ぐるっと一周して元の場所に帰ってくる。 裏も表も通って戻る。終わりがない。 「メビウスの輪、だ。」 「そう、命とは、このように終わりなく、繋がっている。」 「じゃあ、クマオたちの命はどうしちゃったの?」  二人は幼い頃に戻ったように、ご老人の話を聞いている。 「死ぬ事と生きる事の違いはわかるかな?」 「今、俺は生きている。 おじいちゃんも生きてる、でしょ?」 「ああ、そうじゃな。 この状態は生きておる、のかな。」  月夜見は (このじいちゃんはもしかしたら 生きてないのかも。)  それは幼い頃から、ここにいつ来てもこの人たちはおじいちゃんのままだったから。 (俺が生まれて、まだ18年しか経ってないけど。) 「でも、お山の時間と、ここの時間の密度が違う問題でもあるのかな。」 「それはあまり拘らなくてもいいな。 些細な事に感じるほど、生命は長く続いているんだよ。数億年はほんの一瞬と同じ。  実態を持って活動している時を、生きると定義しては、間違ってしまうのじゃ。」

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