52 / 90
第52話 迷える魂
「ねえ、おじいちゃん、魂ってなに?
生命のこと?」
小さな子供がするような質問だった。
摩利彦と月夜見はあの倶楽部の老人を訪ねた。
「この前少し教えてくれたけど、人は死ぬんだよね。」
「生きとし生けるものは皆死ぬ。」
「摩利彦は死ぬ事をどう考えているのじゃな?」
「うん、ジャーンってそこでおしまいになる。
お芝居の緞帳が降りて終わる感じかな。」
「人間が頭で考えるより長い時間、世界は存在している。あまりにも長い時間は、もうあちらとこちらの区別がなくなってしまう。
それくらい長い時間のことじゃ。」
ご老人は平べったい紐を取り出して片方を捻って両橋を繋いだ。
「この表面に指を置いて辿ってご覧。」
ぐるっと一周して元の場所に帰ってくる。
裏も表も通って戻る。終わりがない。
「メビウスの輪、だ。」
「そう、命とは、このように終わりなく、繋がっている。」
「じゃあ、クマオたちの命はどうしちゃったの?」
二人は幼い頃に戻ったように、ご老人の話を聞いている。
「死ぬ事と生きる事の違いはわかるかな?」
「今、俺は生きている。
おじいちゃんも生きてる、でしょ?」
「ああ、そうじゃな。
この状態は生きておる、のかな。」
月夜見は
(このじいちゃんはもしかしたら
生きてないのかも。)
それは幼い頃から、ここにいつ来てもこの人たちはおじいちゃんのままだったから。
(俺が生まれて、まだ18年しか経ってないけど。)
「でも、お山の時間と、ここの時間の密度が違う問題でもあるのかな。」
「それはあまり拘らなくてもいいな。
些細な事に感じるほど、生命は長く続いているんだよ。数億年はほんの一瞬と同じ。
実態を持って活動している時を、生きると定義しては、間違ってしまうのじゃ。」
ともだちにシェアしよう!

