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第55話 あの倶楽部

「月、何かいい事あった? 嬉しそうだね。」  この頃、別行動の多い月に摩利彦が聞いた。 「うん、好きな人が出来た。」 「へえ、ずいぶん純情な言い方だな。 それで、もうやっちゃったのか?」 月は睨んで摩利彦の胸を叩く。 「摩利みたいにすぐそう言う事する人じゃないの。誑しの摩利と一緒にしないで。」 「悪かったな。俺はタスクと付き合おうかな。 あいつ、やりたそうにしてるからさ。」  父の稔彦が、綺麗な人をエスコートしてやって来た。 「よおっ、息子たち、いいセックスしてるかい?」 「稔彦のバカ。そういうの嫌いなんだ。」 「そういうのって?セックスのことか?」 「月はそういうあからさまなのが苦手なんだよ。 父さんは無神経だな。」 「はっ、とんだ純情だ。18才にもなって。」  背中に優しく触れている美しい男に目をやった。 「父さんの恋人?」 「いや、有名なモデルのユーツーだ。綺麗な人だろ。私は、この所、熱心に口説いてるんだよ。」 「はじめまして。稔彦の息子さん? 双子?二人とも美形ねぇ。」  摩利彦と月夜見は、口を開けて見惚れてしまった。ユーツーはロジャーの恋人だったが、世界的なデザイナー、クロード・レイと同性結婚して、イタリアに住んでいた。レイのコレクションのために日本に来て住み着いている。  ユーツーは恋多き男で、今は稔彦に夢中だそうだ。  摩利彦が父の耳元で 「ユーツーとはもう、やったの?」  さっきの意趣返しのような質問をした。 稔彦はニッコリ笑って 「素敵な恋はこれからだよ。 マイチェリーボーイ。」 「ち、ちがうよ!俺チェリーじゃないよ。 出雲で捨てて来たよ。」  そばで月が真っ赤になっている。 「あ、こっちだったか? 鮫島とは最後まで行かなかったのか?」 「鮫島さんとは、一晩中、トランプやっただけさ。摩利と一緒に。」  摩利彦はトランプゲームの前に、ちゃっかりミカドと寝たのだが。  摩利彦は父親の愛人を寝取ってしまって気まずい。稔彦は何でもお見通し、のようだった。

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