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第59話 恋人

「どこに行く?  俺のウチ、ここから近いけど社宅だからな。」 「海斗の部屋、行ってみたい。」  月は友達の部屋に行った事がない。興味津々だった。  5階建ての団地みたいな社宅は、近所のおばさんが井戸端会議をしていた。 「こんにちは。」 男子だから不審がられない。 「あら、駒沢サンちの海斗くん。背が伸びたわねぇ。 お友達?イケメンねぇ。」 「ああ、こんにちは。」  階段を上がって三階だった。 「おじゃましまーす。」 「まだ誰も帰って来てないな。」 「兄弟がいるの?」 「ああ、妹がいる。中学生。部活やってるから帰りは遅いな。塾もあるし九時ごろだ。」 「お母さんは?」 「パートだから八時過ぎだ。 俺の部屋、片付いてないけど。」  月はドキドキした。海斗の部屋は海斗の匂いがした。畳の部屋に机がある。本棚がマンガでぎっしりだ。畳の上に座った。 「狭いだろ。高校卒業したら就職して自分の部屋を借りたいんだ。親から離れたい。」  隣に腰を下ろして顔を近づけて来た。 「キスしていいか?」 「聞かれると困る。」  無理やり口を塞がれた。 ゾクっとした。震える。 (初めてじゃ無いのに。 部室で何回もしたよ、キス。)  激しいキスをした。部室ではした事のないディープキス。舌が入って来て強く吸われる。 (こんなの初めてだ。口の中を全部舌がいじってくる。息が出来ないのが快感になる。  でも、それ以上は無理だ。メガネ越しに海斗の少し長くなった髪を邪魔そうにかき上げる。 「今度,どこかに行こう。給料日に。 男同士でも入れるホテルとか。」  真っ赤になってそんな事を言う海斗が愛しい。 「うん、ウチにくる?  摩利彦と一緒だけど、あいついつも連れ込むから遠慮はいらないよ。」  でもやっぱり二人きりになりたい。 「車の免許持ってる?」 「うん、出雲で取った。」 「すごいな、俺も取りたいんだ。」 「じゃあ、父親の車でどこかに行こう。」  二人は何度もくちづけしながら計画を立てた。 ここには悪霊の憑く隙はない。純愛だ。

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