60 / 90
第60話 橋の向こう
月夜見の部屋に帰って来た。海斗も一緒だ。
摩利彦と玉藻もいる。月は思い出した。
「あの俺が見た夢のようなものの中で、
玉梓っていう人が変な事を言ってたの。」
月は海斗の手をしっかり握って
「初めはあの橋の所に案内されて、橋を渡りなさい、って言ってた。
俺がモタモタしてると最後には、橋を渡ってはいけないって言った。矛盾してる。
どっちが良かったんだろう?」
玉藻が
「渡ってしまったら,もう会えなかったね私たち。」
狸に揶揄われたのだ、という。
「あの玉梓さんに悪意は無いと思う。
狸はたまに趣味の悪い冗談を言うから。」
「俺を殺したかったの?」
「狸はそこまで酷い奴じゃない。
月を嫌いな奴がいるのかな。」
「狸にも色々いるからな。」
摩利彦が宥めるように言った。
「タスクも月が気になってるはずだよ。」
「えっ?知らないよ。」
「神様の一人だからね、おまえも。」
「神様におまえ、かよ。」
最初から狐は態度がデカい。
「俺、神様やだよ。やりたくない。」
さっきから驚いた顔で話を聞いている海斗が
口を開いた。
「二人とも、あ、三人か。みんな何言ってるか
わからない。」
「そうだね。海斗にわかるように話すのはむずかしいな。」
「こちらのお嬢さんは、お友達?」
狐の事も不思議がっている。
摩利彦が玉藻の尻を突っついた。尻尾が出てたのだ。
「自己紹介します。玉藻と言います。
高校の近くに住んでるの。」
稲荷の狐だとは言いにくい。海斗はこの場に女の子がいるので緊張気味だ。特に玉藻は可愛い女の子だったから。年のころは16、7才に見える。
高校生男子なら意識するだろう。
「玉藻さん? 月夜見の友達?」
(こんなうるさい、いたずら狐と友達じゃないよ。)
ギロッと睨まれて
「あ、うん、友達。摩利彦の彼女だよね。」
「ち、ちげえよ!」
「何よ、アンタたち。付き合ってあげてもいいんだよ。どっちがアタシを取るの?」
二人とも手を振ってどうぞどうぞ、と言っている。
「玉藻ちゃん、すごく魅力的だね。
でも、俺、男が好きなんだ。」
「海斗っ!」
ともだちにシェアしよう!

