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第64話 男の身体
「女は簡単なんだよ。
興奮すると濡れるから。男は面倒なんだ。
準備が必要だ。」
摩利彦はミカドに教えてもらった。男の抱き方。意外な事にタスクは女としか経験がないらしい。摩利彦はミカドに教わったのが入れる方だった。
「俺、タチだぜ。」
タスクは摩利彦の言葉がわからない,という顔をした。
「じゃあ、無理だな。俺も多分、タチって奴だ。」
男同士はめんどくさい。どちらが主導権を握るのか。
「こういうのって、自然に決まるものじゃないの?」
タスクはまだ、男の矜持に縋り付いていたい。
二人はシラけて離れた。お互いに口でしたのは無かった事にするのか。
「俺、帰るわ。飯、ご馳走様っておふくろさんに言っておいて。」
摩利彦が立ち上がった。
タスクは取り残される気がした。
急に寂しさが押し寄せて来る。帰って行く摩利彦の後ろ姿を、何も言えず見送った。
「玄関わかるか?」
「ああ、迷子にならないように気をつけるよ。」
タスクは寂しかった。思いつきで車を出した。
歩いて行く摩利彦の後ろ姿が見えた。近づいて車を止める。
「送ってくよ。乗って。」
嬉しそうに摩利彦は乗り込んだ。
「運転、大丈夫?」
「ああ、運転歴は短いけどな。
1学期にとったんだ免許。18才になってすぐ。」
広尾の商店街を抜けて幹線道路に出た。
摩利彦はいつもなら稲荷社を抜けてショートカットするのだが、今日はそんなズルをしなくて良かった、と思った。
「どこに行く?」
「せっかくだから、少しドライブする?」
「横浜だな。国道沿いのモーテルに入るか?」
二人ともさっきの興奮が治まっていない。暗黙のうちにそういうことになった。
「俺、おまえが帰るって言った時、なんかすごく
絶望的な気持ちになったんだ。」
「色々あったからね。憑き物に憑かれたり。
俺も寂しかった。そばにいて欲しいって思った。」
車の中は密室で、距離が近い。気持ちが昂る。
気のせいじゃない。
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