67 / 90

第67話 教室

 いつもの日常だ。 あの日以来タスクは摩利彦に話しかけない。 何だか話しかけにくいのだ。摩利彦も距離を置いているようだ。二人でホテルに行ったなんて誰にも知られたくない。   摩利彦は月夜見にも言わなかった。 「摩利、この前、深夜に帰って来たけど、どこに行ってたの?」  別に隠す必要はなかったが、何となく言いそびれてしまった。 「月はご機嫌な恋人が出来たんじゃないのか?」 「恋人なんて、そんなんじゃないよ。」  それでも月夜見は、ピアノを欲しがって父親の稔彦に買わせている。  マンションの二人の部屋にアップライトピアノが来た。一部屋、防音工事をしてもらって、熱心に練習している。 「友達連れて来てもいい?」  稔彦と摩利彦の許可をもらって楽しそうだ。 数日後、月夜見が海斗を連れて来た。 「海斗じゃん!月がピアノ再開してやる気出してるよ。」 「摩利彦は、タスクと付き合ってるんでしょ?」 「えっ?別に付き合ってないよ。 タスクはモテるじゃん。俺なんか、相手にしてくれないよ。」  彼らのクラスは、ホストのバイトを始めたり、この所浮き足立っている。担任が 「おまえたち、就職も進学もしないからといって 乱れた生活をしてはいかんぞ。」  生徒たちは全く耳を貸さない。 「自立して金を稼いで親を納得させれば いいんじゃね?」  この高校は大分緩やかではある。  席はあの時のまま、月夜見の後ろにタスクだ。 タスクはずっと月夜見が気になっていたのに、なんでか、兄の摩利彦とホテルに行った。  あの時以来,摩利彦もよそよそしい。学校で見かけても無視を決め込んでいる。  悔しいからタスクも忘れたふりをして、月夜見に心惹かれた頃を思い出そうとしている。月の 無垢な所に惹かれていたはずなのに。  何か、自分の手で月夜見まで汚してしまったような気がする。  摩利彦はエロくて魅力ある男だ。それも忘れられない。学校で見かけると身体が疼く。  月夜見に対する純情と、摩利彦に抱く性の疼き。両方ともタスクの気持ちなのだ。 (なんであれ以来、摩利彦は俺を避けるんだろう?俺が嫌いなのか?)  それでも、目の前の席にいる月夜見から目が離せない。 「俺は先の事なんか考えられないよ!」 声に出して叫んでしまった。

ともだちにシェアしよう!