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第69話 動揺

 摩利彦はタスクの言葉に一瞬声が裏返ってしまった。 「いいねぇ、タスクのヴァージン、いただいちゃおうかな?」 「何でヴァージンだと思うんだよ。」 「あ、そうか、タスク先生はベテランだったりして。」  堂島先生が 「おい、おまえら、いい加減にしろ。 これは美しい初恋の思い出に使うんだよ。」 「先生! 初恋のシメは、やっぱりセックスですか?」  まるでそれを推奨しているかのような 堂島ティーチャーの言葉だった。 「いや、別にみんなに勧めてるわけじゃないぞ。」 「先生!使い方教えてぇ。」  勇気ある女子が言った。 「これは、だな、おまえらがいつか巡り会う人のためにいつも持ってなさいっていうことだ。」  柄にも無く耳を赤くして強面の堂島が言った。  摩利彦はさっきタスクが口走った言葉に いつまでもこだわっていた。頭から離れない。  タスクは授業が終わって薄いカバンを掴んで廊下に出た。待ち構えていたのは、摩利彦だった。  わざと足を引っ掛けて転びそうになったところを抱き止められた。 「痛ぇなあ。何すんだよ。」 「おまえとナニすんだよ。  俺の部屋に行こうぜ。」 「ナニ⁈」  わけもわからず摩利彦について来た。なぜか手を繋いでいる。 「恥ずいから、手を離せ。」 「いやだ、おまえ、逃げるだろ。」  両手で肩を掴まれて校舎の壁に押し付けられた。 「逃げないよ。どこに行くんだよ。」  あの稲荷社の境内に入ったと思ったら、麻布のマンションの前に出た。 (まただ。この不思議な感じ。  一人ではここに来れない。)  目の前のマンションに手を引かれて入る。 エントランスでタッチキーをかざして中に入った。エレベーターホールで手を離す。  廊下を少し歩いてドアの鍵を開けた。  ドアの中は摩利彦のいい匂いがした。 「あの、媚薬の匂いだ。」 「よくわかるな。俺はもうマヒしちゃったよ。 どうりで摩利彦に女が寄って来るわけだ。」  摩利彦はカバンの中から手紙を数通、取り出して見せた。丁寧に机に置く。 「せっかく書いてくれたんだから、酷い扱いは出来ないよ。」 丁寧にラブレターを並べる摩利彦を見直した。

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