70 / 90

第70話 摩利彦の家

 タスクは摩利彦の意外な一面を見た気がした。 丁寧にもらった手紙を扱うその手に見惚れた。  何か、パワーのようなものを感じる。 (摩利彦って何か神々しいな。 神々しいって言うのは違うかな。)  いつも乱暴なエロい事ばかり言ってる摩利彦が、意外な気がした。  リビングに入る。テーブルがある。食卓に椅子が4脚。月夜見と摩利彦は二人暮らしだと聞いている。  椅子に腰掛けてお茶を淹れてくれた。その指に見惚れた。 「ほうじ茶だよ。俺、ほうじ茶が好きなんだ。」 「へぇ、意外と和風なんだね。」  この前、勢いでホテルに行ってしまった。最後までは出来なかった。摩利彦もタスクもそんなに経験があるわけでは無い。  それよりも気まずさがお互いを遠ざけていた。 今日は堂島の授業に当てられてタスクが思いを口走ってしまった。 「これ使いたい?」  もらったコンドームを目の前に見せる。 「別に。勝手にすれば。」 「女みたいだな。駆け引きすんの?」 「そんなんじゃないよ。」  二人はシラけてしまった。 摩利彦がそばに寄ってきて頬にくちづけされた。 「無理する事ないよ。 タスクは本当に好きな人としたいでしょ。 そう言うタイプだ。送って行くよ。」  マンションを出て曲がると、すぐに景色が変わった。 (また、あの感じだ。)  学校の途中の稲荷神社に出た。 「この前みたいに寂しくなるよ。 摩利、離れたくない。」 「さっきまで、嫌そうにしてたのに。 気のせいだよ。本当に好きな人と愛し合いなよ。」  冷たい目をして 「じゃあな。」 と言った。何を言っても、どうしても、引き止められない、と背中が語っていた。 (さっきまで距離が近かったのに、何でこうなったの?)  稲荷の向こうにはもう誰もいないだろう。 (きっと俺は揶揄われてるんだ。 もののけみたいだな、あいつ。)  タスクは家に帰って自分の部屋に行った。 この前、来た時の摩利彦の匂いが残っているようでベッドに飛び込んだ。  あの変な媚薬香水の残り香みたいな匂いがした。 「嫌な匂いだ。摩利彦の匂い?」

ともだちにシェアしよう!