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第81話 クロード・ミュート

「えっ、クロード? レイならホテルに帰ったよ。」 「あのクロードじゃないわい。 最新のフロンティアAIモデルの事だ。」 「じいちゃん,すごい新しい話だね。 確かに今、世界中で大騒ぎだ。」  摩利彦も月夜見も、情報としては聞いたことがある。月夜見が説明しようとする。 「アメリカのアンソロピクト社が発表した、最新のAI,  人間の介入を一切挟む事なく全自動で完走する。専門的な知識を持たない一般人が トップハッカー並みのマルウェアや攻撃コードを一瞬で生成できてしまう。」 「だから、一般公開は凍結されてるんだよね。」  老人は珍しく思索的な表情をしている。 「シンギュラリティ、という言葉が遅きに失したようなものじゃ。  数年後にはAIが人類の頭脳を超えると恐れられて久しいが、実はもう、AIに追い抜かれているという事じゃ。」  生成AIからフィジカルAI、そんなものではない。人間の思考を凌駕しているのだ。 「わしは人間の情緒を信じておる。 昔の人間なもので、論理演算をたかが演算機能だと呑気に考えていた。」 「いよいよ始まる。勝手に頼みもしない事まで処理する能力が、自分の思考を持ち始めた。」  この倶楽部の存在の理不尽さ。国家をも動かす力を持った存在のご老人たち。  摩利彦も月夜見も、それは神の領域だ、と考えていた。  神は確かに存在していた。人間は自分たちが理解できないものを神と呼んだ。  便宜上の言葉としての神。暫定的な、神。 クロードミュート。  まだ、この神はよちよち歩きだ。人間の情緒には遠く及ばない。それでもこのミュートは、完全自律的動作を、人の指示無しに完走する。 「段階があるのじゃよ。 時間を攻略する方法が神への道じゃ、とわしらは信じておった。  確かに宇宙の全ては時の流れと共にあった。 時の流れは一定ではない。  それでも有機物の誕生と消滅が、物事を支配すると思っておる。こんな無機物が思考を持ち始めると,誰が考えた?  のう、摩利彦と月夜見。 この自分で考え、行動する機械は、どこに命があるのだろうか。その考えもそいつは自分で引き出すのか。  人、とは何じゃろう? 死なない身体のわしが言うのもおかしいかの?」

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