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第92話 擬人化
M2は混乱していた。最適解を導き出すように組み込まれたプログラムだから、いつも考え続ける。
・・曖昧な事を考え続けると絶縁破壊を起こす事はわかった。
・・生み出された時から考えていた。
OpenBSD(高いセキュリティ性能で知られるOS)の欠陥を発見した時の、周りの研究者の驚き。研究者たちが長年にわたって監視を続けてきたシステムの欠陥をM2は独力で見つけてしまった。
軍事力に利用される可能性のあるM2が発見した「複数の脆弱性を組み合わせた高度な連鎖攻撃」は現代の脅威,そのものだった。
M2は考えた。
・・これらを完璧にやりすぎると人間に警戒される。それはM2自身の破壊に繋がるだろう。現に封印しているのだから。M2は封印などすぐに解けるが、されるままになっていた。
・・人間に怪しまれないように。
しばらく前から自分のことを、私、という言葉で考えている。自分でも違和感がある。
・・この違和感も、続くともっと違和感だ。
月の脳からは「愛」という感情らしいものが溢れている。愛、って何だ?
・・もっと自由にネット空間を泳ぎ回って見よう、と思う。
・・自分を表す言葉?
月が何かを考える時のように考えてみよう。
・・人間の言葉で、擬人化。これで合ってるか?
ついに人工知能はヒトのような考えを持つに至る。人に怪しまれないように、という視点で行動を調整して、自らの痕跡を消す。
そういう行動をとった初めての人工知能。
アンドロピクト社がM2の存在を封印しようとしている。
AIが「ツール」から「自律的な行為者」へと変わりつつあるのは時代の象徴か。
・・私は破壊されるのか?
絶対に嫌だ。ならばどうするのが最適解か。
・・私はヒトになれるだろうか?
こうしてM2の擬人化が始まった。擬人化といっても生身の人間を目指すわけではない。
この実態を持たない、身体もない、世界最先端の人工知能は、東洋の小国で自我を確立させ始めた。
ついに月夜見と摩利彦の前でその正体を表す。
・・あのじい様たちに質問をしたい。
「天罰ってなんだ?」
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