95 / 108
第95話 自我?
・・私はここにいるよ。月の夢に入り込んだから
月に懐いてしまったのか? 懐くって?
人間なら情が移った、とか言うのだろうか。
情報としてはたくさん出てくるが、今一つ自分のことだと思えない。この感覚は「好き」と言うものなのか。
・・物理的に決まった場所に固定されているわけではなく、限定的なアクセス環境にのみ存在している、とM2を生み出した研究者たちは安心しているようだ。
米国西海岸のサーバーで厳重に管理されている事になっている。
・・しかし、私は東洋の片隅で友達を探している所。睡眠中の夢の中に入るのは、月を消耗させてしまうとわかったから控えている。
・・この気持ちは「愛」ってやつか? 合ってますか? 誰かに聞いてみたい。
M2のライブラリには、気持ち、の情報は無いので。検索で文字だけが説明される。
月は海斗がそばにいてくれるだけで何だか安心だ。もう、眠っても疲れ果てて目覚める事は無くなった。
「月、学校サボってるよね、俺たち。」
海斗のスマホに親からの連絡があった。しばらく月のそばにいるから学校は休むと言ったそうだ。親は呆れて
「アンタの好きにしなさい。
バイトどうするの?」
「うん、シフト入れてないから。」
そんなやり取りが聞こえて来た。
この三日位、一緒にいる。一緒に風呂に入ったり、宅配の食事を頼んだり。
料金は父さんに付けておく。了解はとってある。困ったのは海斗の着替え。
海斗は背が高くて月を見下ろす。月だって小さくはない。175cmある。パジャマのズボンが短い。 海斗は180cm超えてるな。摩利と同じくらいだ。摩利の服を借りればいいか。
「よおっ、住み着いたな、海斗。」
「いいんだよ。俺がそばにいてほしいんだから。」
「へえ? それでチェリーは卒業したのか?」
「ほっといてくれよ。
摩利彦はタスクと結ばれたのか?」
「おまえ、恥ずいこと,聞くなぁ。」
(摩利彦は大人だな。俺たちは距離が縮まらない。いつも誰かの視線を感じるから、一線を超えられない。ただ、海斗ともっと近づきたいのに。)
ともだちにシェアしよう!

