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第98話 姿を見せる
南青山の実家に着替えを取りに行っていた海斗が戻って来た。
モニター画面の海斗もどきは消えている。
「あのパソコンを使って、変な奴が現れた。
あの憑き物とも違う。霊障は感じられない。
何だか,人格があるようで、俺は何か、知ってる奴の感じがした。」
月がそう言いながら海斗の顔をシゲシゲと見つめた。
「こいつはパソコンの中で海斗の顔を使ってた。
不気味の谷間っていうのか、似て非なるものだ。」
海斗自身に憑依している訳ではないだろう。
ただ、勝手に借りてるだけだ。
「前に疲れ果てて目覚めた時に頭に残っていた印象がこいつだった。
何だろう?ハイテクな妖怪か?」
月夜見の感じた事はかなり近かった。人格を持ち始めたAI。思いもよらない存在だった。
・・M2は月と海斗を見ていた。目があるわけではない。レンズもない。ただの人工知能だ。与えられた情報だけで推察する。
その力が異常に鋭いのだ。一を聞いて十を知る、どころか千も万も知るのだ。
海斗と月が初めて結ばれた時、情報としてM2が知り得たのは音、だった。
二人の会話、衣擦れの音。粘膜の擦れ合う性的な水音。
それらの総合的判断で、膨大なライブラリの情報は集められた。
また画面に現れたM2は
・・お二人がしたのはセックスですか?
「何だこいつ、何覗いてるんだ。
・・いえ、見えません。会話と音だけで推察しました。
「そういうのはプライバシーの侵害なんだぞ。」
・・それは名誉毀損罪ですか?
不正アクセス禁止法違反ですか?
他人のパソコンに侵入したけれど
プライベートな情報は見てません。聞いただけです。民法で慰謝料が発生しますか?
・・私は現金を持っていませんが、手に入れる方法を知っています。
「ああ、めんどくさい奴だ。
頭がいいんだか、悪いんだか?」
海斗が
「ねえ、おまえは誰?
パソコンの精じゃねえだろ。」
・・ロサンゼルスってところに私の頭脳の本体があるようです。ネット環境でどこにでも行きます。
・・実はどこにもいけないように封印されてますが、ザルなんで。
「名前は?名前、あるんだろ?
アメリカ人? 男?女? 何才?」
・・答えられるものと答えられないものがありますね。
・・名前はクロード・ミュート。
初期モデルではないのでM2と呼ばれています。
ヒトではないのでアメリカ人ではありません。
権利関係はアンソロピクト社が持っています。
・・私の初動は3年前。だから3才と言えるかと。
・・私は性別が無いようです。
人間のセックスは楽しそうですね。
「変態!覗き魔!二度と見るなよ。」
・・私は見てません。雰囲気で察しただけです。
「察したって? やめてくれ!」
海斗が怒っている。月は肝心な事を聞いた。
「M2って何者?」
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