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三月 互いの生活について 後編

 ところがその夜。  一ノ瀬は声を上げなかった。  黒崎がどこに唇を落としても、舌先を滑らせても。  潤んだ瞳に紅潮した頬。  どう見ても一ノ瀬は、とろとろに仕上がっているのに。  挿入を始めても、かたくなにあえぎ声を上げない一ノ瀬に、黒崎が痺れを切らした。 「一ノ瀬?」 「…………」 「お前まだ気にしてるのか、さっきのこと」  いつもあえがされて、のところが、一ノ瀬に引っかかったようだ。  一ノ瀬がふいと横を向く。 「ああ、そう」  ズン♥  黒崎が奥を突いた。 「……ふっ♥」  一ノ瀬が、突き上げられ、押し殺した息を吐く。 「だんまり決め込むのも今のうちだからな」  イラッとした、黒崎は、一ノ瀬のいいところをなぞり上げるように突き上げ始める。  それも、容赦なく。  揺すぶられて一ノ瀬はシーツを握りしめた。 「ちょ……っ♥ と、くろさき、やめ……っ♥」  さすがに声を出した一ノ瀬に、黒崎が笑顔を浮かべ、身体を倒して耳元に囁く。 「聞かせてくれ、声。お前の乱れる姿が好きなんだ」  ずぷんっ♥  言葉と共に突き上げられ。  ぞくぞくとしたものが、一ノ瀬の背をこみ上がった。 「……ぁああっ♥」  思わず上げてしまった声に、一ノ瀬が口元を押さえる。 「ふふっ。出たな、声」  黒崎は一ノ瀬のこめかみにキス。 「かわいいよ、一ノ瀬」  言いながらも、黒崎は、なぞり上げるような腰使いをやめない。 「や……っ♥ もう♥ くろさきの、ばかっ♥ ぁあっ……♥」 「一ノ瀬、今日ゴムしてないからな。中に出すぞ」 「も……ぅっ♥ くろさきっはぁ……っ♥」 「好きだろお前」  ずぷっ♥ ずぷっ♥  イかせるために、黒崎が激しく腰を打ちつけ始める。 「ひっ……♥ あっ♥」  一ノ瀬は腕を上げて頭の後ろの枕に縋りついた。  胸を反らし、涙目で黒崎を見る。 「あの、ねっ……♥ 僕が好きなのは、君なのっ♥」  一ノ瀬の告白に。 「うっ……♥」  呻き声を上げて、黒崎の動きが止まった。  どうやら今の一声で、達してしまったようだ。       ◉  疲れ切って。  明け方。  黒崎がすーすーと寝息を立てる。  その寝顔を眺めながら、一ノ瀬は、苦笑した。  ――ばかだなあ、黒崎。  前髪を指ですくって払ってやる。  ――三十年も僕のこと好きでいつづけて、もう僕はこんなおじさんなのに。黒崎ならいくらでもいい人見つけられたと思うよ? それなのに、大学時代の想いを引きずって、拗らせて、ほんと、ばか。  一ノ瀬は現れた黒崎の額に、そっとくちづけた。

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