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四月 歓迎会で聞くお酒の趣味 前編

 黒崎の事務所で、このたび二名の新人が入所。週末にレストランでの歓迎会となった。  宴席での話題は月末のGWの予定となり、その取得順をかけた年始の麻雀大会へと話題が移って、所長が代打ちに来た一ノ瀬を思い出したらしい。  黒崎にふと、話を向けた 「そういえば、あのやたらと酒に強い彼、いつもは何を飲むのかね? ウチに来た時はウィスキーをあおっていたが」  黒崎は酒を飲まないので、詳しい種類はよく分からない。 「一ノ瀬ですか? そうですね、ビールよりはウィスキー派でしょうか。ワインは赤の方が好きみたいですし、日本酒もよく飲んでます」 「ほーう。そうかね、実はうちの親戚が酒造をやっていてね、今度大吟醸が届いたら、彼にもいくつか送ろう」 「ありがとうございます。一ノ瀬も喜ぶことと思います」  黒崎は一礼すると、その隣に居た女性弁護士がその話題をついだ。  彼女もその麻雀大会におり、なかなかの成績を収めている。 「あの方、カクテルなんかも飲まれるのかしら?」 「あいつは学生時代、たいていソルティドッグとか、ブラッディメアリだとか、なんだか身体に良さそうな物を飲んでました」 「そう、ウォッカベースがお好きなのね」  彼女は美人で聡明だ。  黒崎は、言った。 「駄目ですよ。彼はもうお付き合いしてる人が居ますから」  ぴしゃりと釘を刺す。 「あら、残念」  彼女は鈴を転がすような声で笑った。  ――一ノ瀬を見せるんじゃなかった。  と、黒崎は深く反省した。      ◉  一方、一ノ瀬の事務所でも、新しい事務員が一名入っていた。  そこで、きょうが出勤日だった嬢のうち希望者数名と、事務職員二名、そして一ノ瀬とで簡単な歓迎会が開かれている。  社長のおごりだというので、少し良い店に入ったメンバーは和気藹々。  楽しい時間を過ごしていたのだが。  テーブルの上に置いていた一ノ瀬のスマートフォンが鳴動。  一ノ瀬が画面を覗くと黒崎からのメッセージだ。 黒崎[今晩そっち行く]  短くて素っ気ないメッセージに、一ノ瀬は思い当たる。 ――また、何かやきもちを焼いてるな、これは……。  激しくなりそうな今夜を予想して、一ノ瀬は溜息を吐いた。 「社長~また恋人からぁ?」  めざとく気がついた嬢が、一ノ瀬をからかう。 「ああ、うん。当たり」 「社長の恋人って男性なんでっしたっけ。マメですよね」 「マメすぎて困るよ、今日だって確か向こうも歓迎会のはずなのに」  一ノ瀬がハアと、溜息を吐く。 「彼氏さん、飲み過ぎちゃってるんじゃないですか~?」  すると、別の嬢が口を挟んだ。 「うーん。黒崎? 彼はお酒飲まないからねぇ」  すると、一同が驚いた顔をする。 「え、社長と居てお酒飲まないなんてあるんです?? 絶対飲みに行きますよね社長」  一ノ瀬は苦笑して答えた。 「うん、だからバーではノンアルのシャーリーテンプルとかとりあえず飲ませてる。甘党だから、喜んで飲んでるよ黒崎」  店のメンツは皆、黒崎という人物について知っていた。一ノ瀬が一切隠さない上に、店でも法律の相談に乗ってもらった者も何人か居たからだ。  〝甘党の〟弁護士の黒崎。  皆の黒崎の認識に、また一枚ラベルが増えたようだ。

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