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四月 歓迎会で聞くお酒の趣味 後編

「社長~二次会のカラオケ来るの~?」 「ごめんね、帰らないと」  一ノ瀬がそう申し訳なさそうに断ると、社員達はめいめい冷やかしにかかった。 「あ~さっきの帰って来いってメールだったんだあ」 「あはは。そんな感じ」 「お熱いですね」 「まあね、まだつきあって一年目だから見逃してよ」 「はいはい、ごちそうさまです」  賑やかな一段と、店の前で別れると、一ノ瀬はタクシーを捕まえてマンションへと向かった。       ◉  カードキーをタッチしてエントランスを入る。  玄関を入ると、自動的にライトがついたが、奥が暗い。 ――あれ? 黒崎まだ帰ってないのかな。  一ノ瀬が真っ暗なリビングに入り、灯りをつけると。 「まぶしい……」  黒崎がワイシャツ姿のままソファにいて、迷惑そうな声を上げた。 「な、何してるの? こんな暗闇で?!」  驚いて一ノ瀬が声を上げても、反応が薄い。 よく見れば赤い顔をしている。  おまけに酒臭い。 「えっ、黒崎飲まされたの??」 「いや……自分で飲んだ」  黒崎はソファにぐったりと頭を預け、目をつむったままだ。 「待って、今お水持ってくるから」  一ノ瀬が冷蔵庫からミネラルウォーターの瓶を取ってくると、蓋を切って手渡す。 「でも、どうして飲んだりしたの」 「花崎弁護士に根掘り葉掘りお前のこと聞かれて、嫌だったから自分から潰れた」 「君、弁護士でしょ。もっと上手くかわせなかったの……っていうか、花崎って……ああ、あの女の人」 「覚えてるのか」 「麻雀、強かったからね、彼女も」 「一ノ瀬」 「何? 黒……」  呼び寄せられて、一ノ瀬が顔を近づけると、そのままくちづけられた。 「ん……♥ んんっ♥……はぁ」  黒崎の気の済むようにつきあって、一ノ瀬が顔を上げる。  酔った黒崎を見るのは、これで二度目だ。  一度目は、学生時代。  そして、自分の部屋で、黒崎に抱かれたのだ。 「黒崎……」  二人はしばらくの間見つめ合って。  もう一度唇を重ねた。       ◉  酔った黒崎の抱き方は、ぞんざいで荒っぽい。  気遣う余裕がないのだろうが、ただガツガツと一ノ瀬を求めてくる。  今も一ノ瀬は、普段はあまりしないバックから、黒崎に激しく突き上げられていた。 「あっ♥ あ……っ♥ くろ……さきっ♥ もっと、ゆっくり……んぁっ♥」 「はぁ…はぁ……」  黒崎の荒い息が聞こえるばかりで返事がない。  ――そういえばあの時も、こんなだった気がする。  一ノ瀬は、無我夢中で抱かれた、学生時代の夜を思い出す。  酔った自分も、相手が誰だか分からないままに抱かれて……それが黒崎だと分かった時、一ノ瀬は、ほっとしたのだ。 「一ノ瀬……」  黒崎は背後から無理矢理口づけようと、一ノ瀬の顎先を掴んで身体をねじ曲げる。 「あ、無理……黒崎……、ちょっと、落ち着いて」  黒崎は諦めて、一ノ瀬のうなじにキスを落とした。 「一ノ瀬、一ノ瀬。俺以外見るな」  呪文かまじないのように、黒崎が呟く。  ゴチュゴチュと奥を突かれて、一ノ瀬は返事も出来ない。 「あっ♥ ひぁっ♥ あ……っ♥ ぁあっ♥♥♥」  容赦ない黒崎の深い挿入に、一ノ瀬がイった。 「一ノ瀬……っ」  黒崎は、ぎゅっと締まった一ノ瀬のアナルに扱かれ、一緒に奥へと射精する。 「はぁ……」  黒崎は満足そうに、背中から一ノ瀬を抱きしめた。  しばらく、そうしていたのだが。 「黒崎ぃ。重い。下りて」  一ノ瀬が声をかけても返事がない。  どうやら黒崎は、そのまま深い眠りに落ちたようだ。       ◉  その翌日。 「え? 覚えて無いの?」  朝食の時に、昨夜のことを思い出せない黒崎に、一ノ瀬が呆れた声を上げた。 「俺は何かしたのか?」  ――ああ、まあ、三十年前もそうだったっけ。  一ノ瀬が蓋をした、あの学生時代の夏の夜。 「別に」

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