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第8話 伯爵の奇行から、兄も奇行種だった
蓮がモミモの匂いで落ち着きを取り戻したから、二人は蓮の部屋に向かった。
屋敷の南側、蓮の兄と隣同士の部屋だという。
向かう途中には、中庭が見えた。
庭の隅に小さなコンロがある。
「なぁ、蓮、あれなんだ?」
「ん?あぁ、爺さんが造らせたものらしい。コンロみたいだけど人間用じゃない。昔はバーベキューでもしてたんじゃないか?」
「ふーん、楽しそうだな」
「そうか?あんな小さなコンロだぞ?パーティーにもならない」
「家族でやるには十分だろ」
「あぁ、そうか」
蓮の表情が少し和らぎ、口元に笑みが浮かんだのをバルドは嬉しく思った。
蓮の部屋を開けると、ほとんど何も無かった。
ベッドと本棚。小さな机と椅子があるくらいだ。
「変わらないな、物置にでもされてるかと思ったけど」
蓮はそう言いながら、ベッドに腰掛け、バルドを呼ぶ。
バルドは部屋の隅にダブダブを置くと、言われるままベッドに腰掛けた。
「蓮は荷物が少ないな」
「ん?まぁ、そうだな。昔はわがまま言って、色々欲しがったけど、何を貰っても嬉しく無かったからな」
「何が欲しかったんだ?」
「………………今は…………これだけあればいい……」
座ったバルドの腰にしがみつくように蓮は抱きついた。
バルドもニコリと笑って、抱きしめる。
自然と二人の顔が近くなり、唇が重なった。
ピチャリと水音が鳴って、ようやく口を離した二人は、軽く息が上がっている。
バルドは蓮の服を捲りあげ、腰のラインを撫で上げながら、蓮の胸に舌を這わせる。
「んぅっ……ふっ……」
「はぁ……蓮……止められない……ご実家なのに、良いのか……?」
「気にすんな……俺の部屋だ……俺も欲しい……」
蓮がバルドの服に手をかけると、バルドは蓮をベッドに押し倒した。
「はぁ、良かった……緊張した……」
「ははっ……だな…………んっ……そこ……あんっ……」
バルドの舌が蓮の胸の突起を転がしながら、蓮の服を剥ぎ取っていく。
あっという間に裸にされ、胸と蓮自身を同時に攻められた。
「あぁっ……バル、ド……」
「蓮……胸も、下もカチカチだ……舌触りが良い……」
バルドの舌の感触に、蓮の下半身からはタラタラと期待が流れている。
それを舐め取られ、蓮の腰は浮いた。
「あはっ!……ぁっ……バルド……ダメだ……出る……」
蓮も思った以上に緊張していたのだろう。
限界が来るのが早すぎるだろうと思ったが、バルドは可愛いそれをパクりと咥えて吸い上げた。
「んんんっ……あふっ……」
息を切らせながら、吐き出されたものを、バルドは舐めあげる。
そのまま小さくなったものを口で転がしていたいが、可愛い反応は後に取っておこうとバルドは口を離した。
バルドの口の周りも、蓮の下半身もグッショリと濡れている。
昼に食べた、酸っぱい味がバルドの口に蘇った。
「……バルド……後ろいじってくれ……」
「蓮、これ……あれだ……」
「…………………………」
蓮はバルドの表情で察する。
「厨房は今使えないぞ……夕飯の準備をしてる」
「…………あ、あのコンロは?」
「はぁ……わかったよ……」
蓮は起き上がり服を着ると、バルドに口を拭けとタオルを投げ渡した。
疼く体を宥めながら、二人で中庭へと向かう。
瀬名を呼べば、綺麗に着替えた姿で、中庭のコンロに案内してくれた。
コンロは少し落ち葉や埃をかぶっていたが、ザッとバルドがそれらを燃やして使えるように整える。
瀬名は、必要な道具と他の材料をバルドに聞くと、厨房へ取りに行ってくれた。
「なんか、悪いな。こんな思いつきなのに仕事増やしたんじゃないか?」
「悪いと思うなら、俺にも謝れ」
「あぁ、また後でな?絶対美味いもの作るから」
「…………はいはい」
バルドはそう言って、コンロの裏手に周り、状態を調べる。
綺麗にレンガが並んでいるが、一つだけ飛び出ていた。
不思議に思いつつも、それを直そうと押す。
ーガコン!ガガガガガッー
急にコンロの中は開き始め、地下に続く階段が現れた。
「うわっ!なんかやっちまった!」
「は?なんだこれ……」
「蓮も知らないのか?」
現れた階段に、蓮は何かピンときた。
「爺さん秘蔵のワイン蔵?ははっ、本当にあったのかよ」
テンションの上がる蓮に、バルドはハテナを浮かべる。
「ワイン蔵なのか?」
「多分な。爺さんは変わり者だったみたいだから。でも、ワイン好きで色々と集めていた。死んだ後、どこにあるのか探したけど見つからなかったって話を聞いたことがある」
ニヤリと笑った蓮は、意気揚々と階段を降りていった。
バルドは、灯り用にと、左手に小さく火の玉を作り、蓮の後へ続いていく。
階段の先はすぐに扉だった。
扉はカーブの扉と同じように厚みがあり、重厚感のあるそれを開けると、ふわりとワインの香りがして………………
「うわぁぁっ!すごいなっ!」
バルドが声を上げ、立ち尽くす蓮を押し退け中に入っていった。
「兄貴……?」
蓮は言葉にならなかった。
「れ、れれれれ蓮っ!これはっ……その……あ、み、見ないでくれ!」
「いや、お兄様、すごいですよこの部屋!あぁ、ずっと見ていたい」
蓮の兄、蘭は、至極優秀な兄だった。
常に勉強と鍛錬に身を注ぎ、蓮は、一緒に遊んだ記憶はほぼ無い。
両親の期待に簡単に応えていく蘭を、羨ましいと思う反面、妬ましかった。
自分も、蘭と対等に、両親に認められたいと、蓮なりに努力をした。
蓮が宮廷ソムリエとなり、蘭と同等の立場を手に入れた時、ようやく対等に話してくれるかと思ったら、家を出るのかと、冷たく言われた。
まるで、清々したとでもいうような言葉は、蓮を実家から遠ざけるものへと変わっていった。
しかし、今、超エリートの次期伯爵は、普段の真面目な姿からは想像できないほどの部屋で、くつろいでいた。
蘭の膝の上には、抱え込めるほどのぬいぐるみ。
それも、黒髪で、大きな目のかわいらしい顔をした男の子が、ワイングラスを持っている。
その他にも、大小たくさんの同じぬいぐるみが、壁に、所狭しと並んでいる。
バルドは興奮してその可愛らしいぬいぐるみを見つめている。
「これ、蓮だよな?」
「しらねぇよ」
「れ、蓮だぞ!蓮だ!こんなに可愛いのは蓮だけだろ!」
呆れを通り越した蓮の言葉に、蘭は即答した。
「なんだよこれ……」
優等生の兄の姿が崩れ落ちていく中、蓮はかつて自分がわがままを言って買い与えられ、それでも寂しさを埋められなかったおもちゃが、部屋の至る所にあるのを見つけた。
「蓮……幻滅しないで欲しいんだ……お兄ちゃんは、こんなに蓮を溺愛してるが、次期当主としてしっかりと仕事はしているからな」
「だからなんだよ。こんな部屋に俺のもの集めて、何してんだ」
「だって、蓮が完璧なお兄様が格好いいって言うから、完璧な次期当主になろうと思って、蓮への気持ちは、この部屋だけで発散してきたんだ」
「最高の部屋です!お兄様!」
「お前は黙れ」
蓮は、大きく息を吐いてその場にしゃがみ込んだ。
結局、誰も蓮を嫌ったりなどしてなかった。
「素直に好きって言ってくれよ……」
そう呟きながら、蓮は自分のしてきたことを振り返り、反省した。
顔を上げれば、バルドがニカッと笑って蓮のぬいぐるみを抱いている。
(お前が抱くのはそれじゃない……)
軽くぬいぐるみに嫉妬しながら、蓮はクスリと笑い、手元にあった小さなぬいぐるみを兄貴に向かって投げつけた。
「バルドが、ダブダブ料理作るぞ、一緒に食べるか?」
「蓮!もちろんだ!」
嬉しそうな蘭の表情に、久しぶりに蓮も兄に笑顔を返した。
分かり合えた兄の後ろの壁に、女の名前が羅列されている紙が貼られている。
蓮は、ゆっくりと蘭に視線を移す。
蘭の顔が、にっこりと違う笑顔に変わった。
「これは……お仕置きリストだよ……」
「やめろ、マジで……」
蘭の目がギラリと光り、蓮のぬいぐるみをギュッと抱いている。
「お仕置きですか?」
「気にしなくていい。ダブダブ作りに行くぞ!」
蓮のぬいぐるみを持ったままのバルドの手を引いて、階段を上がっていく蓮の後ろを、蘭はクスクス笑いながら着いて行った。
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