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第9話 ダブダブの甘さに溶けた夜、家族も恋人もマリアージュだった〜ダブダブのコンポートキャラメリゼ〜

 バルドは右手に包丁を持つ。  ダブダブの皮にスッと切れ目を入れて、中の果汁をボールに移すと、ザクザクと果肉を切り刻み始めた。  あれだけ固い果肉を切れるのだから、もう怪我は大丈夫だろう。  (でも、無理は禁物か……)  ワイナリーでの夜を思い出しながら、蓮はゆったりとキャンプ椅子に座っている。  中庭で料理をすると言ったら、瀬名が出してきたのだ。  他にも、どこにあったのか、ベンチやテーブルが運ばれていて、簡単な調理台も作られていた。  蓮はバルドの腕を心配しつつ、バルドが地下室から持ってきていた蓮ぬいを膝に置いて、抱く。  風が冷たくなってきて、ぬいぐるみの暖かさがちょうど良い。  そんな蓮を、蘭は鋭い目つきで睨むように見つめていた。 「兄貴、言いたいことがあるなら言ってくれ。俺はずっとその目が嫌だった」 「っ!!そうだったのか?悪かった。その、言ったら格好いいお兄様像が崩れるんじゃ無いかって思って……」 「もう崩れたから心配すんな」 「あ……じゃあ、その……蓮が、蓮抱えてて……可愛すぎるだろ!!しゃ、写真撮りたい!その可愛い姿……あぁ、いや、目に焼き付ける……蓮、蓮……可愛い……」  涎を垂らしそうなほど身悶える兄に白い目を向けていたら、バルドがダブダブの実を茹で始めた。爽やかな香りが辺りに広がる。 「果汁で煮てんのか?」 「あぁ、わかるか?多分、これで果肉も柔らかくなる。あとは、ルムで甘くキャラメリゼだ!」  バルドはコトコトと弱い火を当てながらフライパンを揺らす。  甘く香ばしい匂いが中庭に充満して、使用人たちがチラチラと廊下から視線を送ってきた。 「よし、いいだろ」  フライパンから皿に盛られたダブダブのコンポートキャラメリゼをバルドはテーブルに置いた。  テラリと黄金色に光るダブダブが美しい。  蓮がゴクリと喉を鳴らした。  蘭はその喉の動きを凝視する。 「兄貴、離れてくれ……」 「見ていたいんだ。久しぶりだから」 「仲良しですね」  ニコニコ笑うバルドに呆れた目を向けながら、蓮はダブダブにフォークを刺した。 ーサクー  市場では齧る事もできなかった果実に簡単にフォークが入った。  口に入れれば、サクリと噛める。 「うま……甘い……けど、ほろ苦い感じが良いな」  果実の歯応えに、甘く鼻に抜ける香ばしさが堪らない。 「瀬名、ワインセラーの中身は変わってないか?」 「はい。坊っちゃまが屋敷を出られる前と同じものが揃っております」 「なら、クッフのワインを持ってきてくれ」 「かしこまりました」  瀬名は、綺麗にお辞儀をして、中庭を出て行った。 「蓮、そんな貴重なワイン、良いのか?」 「あぁ、さっきの街で作られてる。この辺りじゃそこまで貴重じゃない」  心配するバルドにそう言えば、蘭がニコニコと蓮を見ている。 「蓮、賢いなぁ。立派にソムリエじゃないか」 「黙ってダブダブ食べててくれ」  初めてちゃんと褒められたが、なんだか居心地が悪い。  蓮がフォークを渡すと、蘭は跳ねるように喜ぶ。 「このフォークは永久に保存するぞ!」 「すんなよ、食えって!」  蓮に言われ、嬉しそうに蘭はダブダブを口に入れた。  蘭の目が、驚きに丸くなったところに、瀬名がワインとグラスを持ってくる。 「良いか?ダブダブを食べたあとにこれを飲め」 「このグラスも……」 「保存すんな、飲め!」  蓮は蘭とバルドにグラスを渡し、自分にも注ぐ。  一口飲めば、甘いワインがより、ダブダブの甘さを引き立てた。 「すごいな。まるでケーキみたいな余韻だ」 「だな、ここまで甘くなるとは思わなかった」  蓮とバルドは顔を見合わせ、マリアージュに笑い合う。  蓮はグラスを置くと、そっとバルドの横に体を寄せた。  ピタリとくっつく蓮の腰をバルドが引き寄せる。    最高のマリアージュ。  これを作り上げられるのは蓮とだけだ。  蓮が好きだとアピールしたい。  そう思うと同時に、バルドは蓮に口付けた。  驚く事もなく、蓮も受け入れる。  徐々に深くなっていく口付けに蓮はバルドにしがみつき、バルドは蓮の体を引き寄せる。  ようやく離れた時、蓮の顔は蕩けていた。  モジッと体を捩る。  満足そうに笑って、調理器具を片付けようとするバルドの腕を捕まえた。 「瀬名、何泣いてんだ」 「いえ、申し訳ありません。つい、嬉しくて……」 「…………夕飯まであとどれくらいだ?」 「20分くらいでしょうか」 「俺らは遅れていく」 「………………承知いたしました。夕飯の時刻を遅くしましょう」  瀬名は、懐中時計をパチンと閉め、伝令に厨房へ向かっていった。 「蓮、何するんだ?みんな腹減ってるだろ」 「良いから、俺の部屋行くぞ。さっきの続きだ」  蓮は、ダブダブのコンポートキャラメリゼとクッフワインのマリアージュに溶けている蘭を横目に見て、バルドの腕を引っ張っていった。 「ダメだバルド、我慢できねぇ……早く欲しい……」 「んっ、蓮……片付けしてないのが気になって……」 「気にすんな。誰かがやってくれる」  蓮はバルドの服を脱がせ、自分も勢いよく脱いでいく。  甘い香りが、二人の体にも染み付いている。 「あんなマリアージュ……興奮するだろ……」 「……あぁ、あれは美味かった……」 「バルド……挿れてくれ……」  ベッドに沈み込んだ蓮は、両手を広げ、バルドを期待する。  バルドは、準備が不十分だろうと思ったが、この流れを止めると蓮が嫌がることをわかっているから、ゆっくりと腰をすすめた。  蓮の様子を見ながら、気持ちのいい場所を掠めていく。 「バルド……気持ちいい……」  蓮は、快感だけは最初から素直に教えてくれていたなと、バルドは笑う。  子供の頃の蓮は、ひどく寂しかったのだろう。  大人になってから、それを快感で埋めるかのようにバルドにも求めてきた。 「蓮……マリアージュだ……一緒に気持ち良くなろう」 「んんっ……あっ……あぁんっ……」  バルドは、腰を進めながら、快感に素直な蓮の反応に嬉しくなる。 「これからは、どんなマリアージュでも全部一緒にだからな」 「んぁっ……んんっ……ぁふっ……」  蓮は聞こえているのかいないのか、甘い声をあげながらバルドの揺さぶりに身を預けていた。 「俺も、チェシュも志岐も、クロップも、蓮の家族も、俺の家族も、みんなでマリアージュだ」 「ふっ……ぅんっ……あっ……」  ツゥっと蓮の目尻から涙が流れる。  バルドはそれを舐め取って、蓮の奥へと腰を打ちつけた。 「あぁあぁっ……っ……」  ギュッとバルドにしがみついて、蓮は欲を吐き出す。  蓮の締め付けに、バルドも身を震わせて、二人で長く息を吐いた。 「もう、夕飯の時間だな……」 「…………このまま、もう一回……」 「蓮、みんなでマリアージュだろ?」 「……真面目なバルドはずるいだろ……」  蓮は、バルドの言葉にまた涙が溢れそうになる。  照れ隠しに、そばにあった、蓮ぬいをバルドへ押し付けた。

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