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第2話

 そう言うと大家は睨めつけるように僕の足元から頭のてっぺんまでを見て、鼻で笑って肩を竦めた。  刺さるような視線が意味することに気づいて、僕はぎゅっと自分を守るように自身を抱き締める。  大家が言いたいことは、わかる。  抱き締めた体はΩにしては厚みがあって、ごつごつと筋肉質だ。小さくない大家さんを見下ろしている段階で、僕の身長の方が随分と高いってことでもある。  つまり、本来なら華奢で小さく守ってあげたくなるような風情が僕にはかけらもないってことだ。  見た目ではわからないほど、ΩらしくないΩ。  Ωと証明してしまうネックガードを服で隠している今、見た目で僕の性別はわからないはず…… 「なら、  ど、どうして、僕がオメガだって  ……」 「あんたんとこの社長、古くからの馴染みでよ。あんたの履歴書と住所を見て大慌てで連絡してきてくれたんだ。おかげで大事にならずに済んで感謝だなぁ」 「かいしゃ? ……っ、それは、僕の履歴書の情報を勝手に漏らしたってことですか⁉ それは個人情報の   」  ────どぉん!  悲鳴を上げてしまいそうだったが、辛うじて飛び上がるだけに抑えることができた。  踏み鳴らされた床がビリビリと震え、耳を殴りつけるようだった音の余韻を残す。 「オメガに人権があると思ってんのか? お前らは社会のドブネズミだろうが。情報共有して駆逐せんとどんどん病気を移しやがる。甘ったるい匂いさせて男誘ってこの部屋でズコバコよろしくやるつもりだったんだろ! この病気持ちの淫乱が!」 「っ!? 僕は病気なんかないしい  「ともかく! 出て行ってくれ。会社ももう来なくていいってよ!」  腹の底から嫌悪の混じる声で言うと、大家は積み上げた段ボールを蹴り飛ばして、僕へ向けて唾を吐きながら階段を下りていった。  ひしゃげた段ボールの中からきちんと畳んで片づけてあった服が零れて、赤錆にまみれて茶色くなっている。  それは、一人暮らしに浮かれて買った真新しい服だった。  今朝までは、入社に一人暮らしにと輝かしい未来が待っているんだって疑ってもいなかったのに。  今ここにあるのは、汚れて壊れたものばかりだった。  この世の中には男女性別の他に一部の人間にはバース性と呼ばれる特徴がある。  バース性はαが頭脳明晰で身体能力に優れ、他者を圧倒する存在感と誰もが見惚れる外見を持つα、年に数度の……まるで動物のような発情期を迎えて他者を誘惑して股を開くΩ、そしてそのどちらでもないβで構成されている。  そしてどこの世界もそうであるように、ここにもヒエラルキーが存在していて、王者の如く頂点に君臨しているのはすべてにおいて優秀なαだ。それからその下にその他大勢のβがいて、Ωは最底辺の生き物としての価値が決められていた。  

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