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第7話

「リン、誰かきたのか?」  ステンドグラスの玄関扉を通ると、背の高い男性がルカの名前を呼んだ。  静かで染み入るような深い響きの声は、深い森の中の音に似ていると思った。  全体的なシルエットはほっそりとしていて上品で、銀色の眼鏡がよく似合っていてガラスの向こうの瞳はルカのものより深い色味をしている。  ルカの天使のような顔立ちに比べてシャープな印象だったけれど、その分美しいという表現がよく似合っていた。 「応募してきた人?」 「はい、  」  飯野と言います と続けようとした言葉を遮るように背中を向けられ、傍らの青年に向けて二言三言話して階上へと何も言わずに行ってしまった。  僕に向けて雇うとも雇わないとも言われてなくて、もしやこのままなかったことにされるんじゃないだろうかと心配になり始めた頃、盛大な溜め息が隣で上がった。 「はぁ……まぁルカが懐いてるならしょうがないよね。ホントはトーマとの家に他人を入れたくないんだけど……」  つん と尖らせた唇は薔薇の蕾のようで可憐だ。 「誰かが家事と育児をしなきゃだし」  彼は納得がいっていないようにぶつぶつと繰り返しながらリビングへと招いてくれた。  子どもの成長にはそれなりの環境が必要だと思う。  もちろんそれは各家庭の事情を鑑みて基準は変わってくるとは思うけれど、それでもこのゴミと汚れ物だらけのリビングだけは絶対に違うと言える。 「な な なんですか、これ……」  ルカはまだ口にものを入れてしまうかもしれない年頃だというのに、小さなペットボトルのキャップなんかが平気で転がっていて…… 「僕もトーマも家事に割く時間がないんだよね」  そう言いながらネイルのチェックをする姿を見るに、時間があってもしないんじゃ……と思わなくもない。  決して狭くはないリビングなのに、足の踏み場はなくてドアを入ったすぐのところで立ったまま会話を続ける。 「君の仕事はこの家を清潔にすることとルカの世話。トーマも僕も食事は外で済ますから、ルカの食事だけ用意してくれたらいいよ。食材費や必要なものは立て替えておいて、レシートか領収書をくれたら払うから」 「はい」 「それから、くれぐれもトーマを煩わせないで? いい?」  ギロリと睨む瞳は、雇主であるトーマの時間をとるということよりも彼に近づくことを警戒しているような雰囲気だ。  どこからどう見てもΩだとわかる青年と同じく疑いようのないくらいαなトーマと……  ルカもいるし、夫々か……もしくは番なのかもしれない。  

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