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第10話

「うん、なんでも大丈夫だよ。カレーとかハンバーグとか、パスタとか?」 「ちゅるちゅる?」  ルカが食いついたのは最後のパスタだ。 「ちょっと待ってね」  急いでキッチンに飛んで行って……もしかしてと思っていたけれど、案の定そこはがらんとした何もない空間だった。  かろうじてお鍋や食器類はあるけれど、埃が積もっているものもあってここで調理が行われたのはずいぶん昔のようだ…… 「うわ……冷蔵庫も…………」  水はたくさん入っているけれど、それ以外はバターみたいな調味料類すらない。  小さな子供が食べたり飲んだりするようなものは一切なかった。  腐ったものが中に詰まってなかっただけ……よしとしよう。 「お菓子類を食べさせない……って、わけでもなさそうだし」  リビングに転がっているゴミ袋の中には子供の好きそうなお菓子類の袋が入っていた。  なんだか嫌な予感がして……ルカにいつも何食べてるの? って問いかける。語彙力は全然だったけれど、こちらの言うことは十分に理解しているようだったので、ゴミ袋を指差しながら尋ねてみる。 「あの中に、朝に食べたものある?」  さっき、服を片付ける合間合間にゴミ袋に放り込んでいったお菓子やパンの袋を指さすと、素直に傍までいって首を傾げながらゴミ袋をじっと見つめていた。  手を出さない様子に、さすがにお菓子や菓子パンばかりを食べさせていたわけではなさそうだと、ほっと胸を撫で下ろそうとした瞬間、ルカがさっとゴミの中に飛び込んでしまった。 「わっ……わー!」  大急ぎでルカを袋から抱き上げ、ケガがないかを確認する。  スナックの袋が多かったけれど、だからと言って尖ったものがない保証にはならない。特にこの柔らかそうなほっぺたは、ちょっとプラスチックの蓋なんかがあれば、それだけでケガをしてしまうだろう。 「ケガしてない? 大丈夫だった?」  「ん! あーた!」  ルカは両手に持ったものをふんっ! と掲げてみせる。  きっと、僕が尋ねたものを自分の力で僕の目の前に持って来れたってことで、すごく誇らしかったんだと思う。  けれど、満面の笑みを浮かべている顔の傍にあるスナック菓子と小さな菓子パンの袋を見てしまった僕は……  僕は……  リンに対する態度、  トーマの会話すら成立しない態度、  そして、ルカの怯える様子、  最後に、この家の惨状……  褒めてもらえると思っていたのにいつまでも僕が動き出さないからか、ルカは満面の笑みを崩して、唇の端っこに笑顔の残りを貼り付けながら懸命に「……ちゃい」と繰り返している。  

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