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第15話
思わず言葉を切った僕を見つめていた両目が一度瞬いて、再び階上へと行ってしまうまでは数秒もかからなかった。
「…………」
頭から濡れて寒いという感覚はあったけれど、それ以上に胸の内側がひんやりと感じて。
なんとも言えない居心地の悪さにブルリと身震いした。
素直に歯磨きをさせてくれたルカに、いつも寝ているところはどこ? と尋ねたら二階の一部屋へと案内された。
なんとなく覚悟はしていたけれどドアを開けた先はどことなく湿っぽくて澱んだような埃の気配があって……今すぐに窓を開けて掃除をしたい欲求に駆られたけれど、あくびをして目を擦っているルカの傍でそんなことはできない。
「明日一番に掃除するっ絶対にするっ」
「しゅる〜?」
僕の言葉尻を捕まえて舌足らずに繰り返すルカは、もう半分夢の国の住人だった。
青いオパール色の瞳に影ができて、うつらうつらと首が揺れている。
「ごめんね、もう寝ようね。今日はここで我慢してね」
「ぅん〜?」
ルカはよくわかっていないままに頷くと、いつもそうしているんだってわかる動きで、くすんだ色のシーツと毛布の間に滑り込んでもぞもぞと体勢を整えた。
歌を歌えとも絵本を読んでともねだらないままに独りで寝てしまう姿は、これがいつものことなんだって僕に教える。
「 っ」
会ったばかりの子供にこんなにも感情が揺さぶられることがあるなんて思わなかった。
この小さな子供がそれを当然と受け入れている姿に、怒りよりも悲しさが噴き出して……視界の端がじわじわと滲んで溶けていく。
「寝るまでお歌歌ってあげるね」
ルカはもう目を閉じているし、聞いていないのかもしれない。
でも毛布にくるまってうずくまるようにして眠る、子供らしからぬ姿にささやかでも何かしてあげたいと思ったから……
毛布から少しだけ出た手を握ると、眠い子供の体温が伝わってきてホッとした。
「とんとん ひつじさん おやすみなさーい いいこで夢みるきみのそば 」
ところどころちょっと歌詞はあやふやだけれどリズムはちゃんと覚えてる。
弟達を寝かしつけるために布団の中で何度も歌ったことがある歌はどこで覚えたものだったか、はっきりとした記憶はなかったけれど、幼い時の柔らかで暖かな記憶の一つだった。
ルカがぐっすり眠ったのを確認してから階下に戻る。
今日初めて来た家だったけれど、着いてから慌ただしく片付けに走り回っていたからかどこに何があるか戸惑うことはなかった。
「とりあえずー……明日一番にルカくんの部屋を掃除するから……寝るまでに台所を簡単に片付けておきたいなぁ」
それから……と段取りを考えると頭が痛くなってくる、何せこの家は広いし汚すぎる!
美形親子が住んでいるにしては残念すぎる家だった。
「せっかく綺麗な家なのに……」
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