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第16話

 汚れてはいるけれど、それでもわかるおしゃれなインテリアだ。  今では汚れ物を掛けられるだけになったキッチンの椅子、枯れた花がそのままになった花瓶、元の色がわからないほど汚れてしまっているラグ、どれをとっても一つ一つ選んだんだろうなってわかる代物だった。 「玄関のステンドグラスも素敵なのになぁ」  埃が積もって表面がくすんで……色と共にその輝きも失せてしまっているのが残念だった。  そこも掃除したいけど、まずは家の中から綺麗にしてしまいたいし…… 「まずは今夜はキッチン! そして明日の朝は洗濯と同時並行でお風呂場のカビ取り! あーんど! 午前中いっぱいはルカくんのお部屋の掃除っ!」  自分に気合を入れるためにも声に出しながら手を高く突き出す! 「ファイトだ! 都筑っ!」 「――――独り言が趣味なのか?」 「ひゃっ⁉︎」 「夜は静かにしてくれないか。いや、夜とは言わず、私がいる間は騒ぎ立てないでもらいたい」  いつから後ろに立っていたのか、抑揚のない静かな口調でトーマは言うと、眼鏡を外した目で僕をじっと見ている。  ルカのようなオパールの青い瞳に近いけれど、もっと……暗くて硬くて頑なな印象の瞳だった。  でも透明感のあるとても美しいブルーグレーの瞳は、まるで氷を入れたサイダーのような揺らぎを持っていて…… 「何時間でも見つめちゃいそう……」 「何がだ?」 「はっ! いえ……なんでもありませんっ! あの、御用でしょうか?」  さっと姿勢を正して敬礼でもしそうな勢いで尋ねると、トーマは少し気圧されたように口を引き結んだ。 「余っていたらで構わない、小腹に入れるものが残っているだろうか?」  少し恥ずかしそうに告げるトーマの姿はαらしく容姿端麗で文句のつけようもなく美しかったのに、夜食をねだりに来る弟と雰囲気がよく似ているせいか僕は可愛らしいって思ってしまった。 「わかりました。ご用意いたします」  静かに頷いてテーブルに向かうトーマの背中を見ながら、どうしたものかなとうめく。  用意しますと言ったけれど、買い物らしい買い物にも行っていない、あるのはコンビニで慌てて買ったルカ用の食材の残りと朝用に買っておいたパンとかヨーグルト、りんごだけだ。 「僕の分はお子様ランチを作った残りでいいやって思って、必要以上に買ってなかったんだよね」  とりあえず残りの材料でできるものと言えば…… 「ハンバーグと唐揚げの二種のサンドイッチ! それからコーンポタージュドレッソングの温野菜とフルーツヨーグルトかな」  ルカの夕食を作る際にざっくりとしか片付けられてはいなかったけれど、このレシピなら十分だ。  サンドイッチ用じゃないけれど二枚の食パンを薄く切ってカップサラダの底に入れられている細切りにされている野菜を敷く、一つにはハンバーグを乗せて、もう一つは唐揚げにしてマヨネーズをソースがわりに。  

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