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第19話

 ジャムとかあればもうちょっとおしゃれだったりしたんだろうけど……それも明日、買ってこよう! 「どうぞ、ラッシーです」 「ラッシー……」  トーマは今までで一番感情が揺れた声で呟き、僕の差し出すコップを両手で受け取った。  真っ白な液体の入ったグラスをひたりと見つめて、なんとも言えない表情をしている。 「あ、牛乳お嫌いでしたか?」 「……いや」  小さく返してトーマは静かになんちゃってクイニーアマンとラッシーを口に運んで……どうやら、嫌いではないようだ。  こんな時間にこんなに食べさせて大丈夫なのかなって心配はあったけれど、トーマはしっかり少しも残さずに食べ切ってしまった。  僕の晩御飯はあっさりなくなってしまったけれど、作ったものを完食してくれるっていうのは嬉しい。 「……ごちそうさま」  いただきますがなかったからごちそうさまもないって勝手に思ってたから、トーマがボソリとそう言ってくれたことに思わずパッと笑顔が浮かんだ。 「お粗末さまでした!」  僕の声が大きすぎたのか、トーマははっとこっちを見てから……何事もなかったように立ち上がる。  それでも、初対面の時のようなツンとした雰囲気がなくなっていたから、僕はちょっと調子に乗ってしまった。 「あのっもしよければ明日の朝ごはんも作りましょうか? お時間を教えていただければ……」 「明日は  」 「はい! もしよければルカ坊ちゃんとご一緒に  っ」  急にピリついた空気にギュッと肺の空気が押し出されて、僕はよろめきそうになってとっさにカウンターに手をついた。  人が怒る……というよりも、αの威嚇フェロモンが漏れてるんだって、苦しい息の下で感じる。  ほんの短い会話の中で、何かトーマを怒らせるようなことを言ってしまったんだって気づいた時にはもう遅くて、クラクラするような威嚇の臭いを残してトーマは背を向けてしまった。  それは、最初に見た時と同じような冷たい背中だ。 「あ……す、すみません…………すみませんっ」  僕の謝罪が聞こえたかどうかはわからない。  でもトーマが振り返って事情を説明してくれることはなかった。  夕飯にと食パン一枚を齧って、寝袋の中で物が崩れてこないかと怯えながら過ごしたせいかよく眠れなかった。  それでも朝はくるし仕事としてここにやってきたのだから起きないといけない。 「よく……眠れなかったな……」  そうぼやきながら一晩中もたれるようにしていた引き戸と背後に聳える荷物の山を交互に見る。  寝室として使うようにと言われたのはリビングの奥にある和室、引き戸で区切られた部屋で……中は他の部屋以上に物が詰め込まれた物置部屋だった。  

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