26 / 30
第26話
「この子、野分さんのところのお子さんでしょ?」
「あ、はい」
「この間のこと、大丈夫だった? うちの主人も心配して探しに出てたのよ」
「え?」
神妙に頷いて話を合わせることもできたけれど、この情報はしっかり聞いておかなきゃいけないって何となく感じた。
「すみません、こちらに来たばかりで何も知らなくて……」
「あっ 」
おばさまたちはちょっと気まずそうな顔をしたけれど、僕と手を握ってるルカがにこにこと笑いかけると、表情を和らげて同情するような柔らかい目つきになる。
「気をつけてね、人攫いがあったのよ」
「ひと……って、誘拐ですか⁉︎」
思わず声を上げてしまったけれど、それにしてはおばさまたちの反応は微妙で……
「ご家庭の事情もあるんでしょうけど、こんな可愛い子だから……気をつけてあげてね」
重ねて気をつけるように言われて、もっと詳しく話が聞きたかったけれどルカが限界だった。
普段外に出ていなくて体力がなかったからか疲れたみたいでじっとしていられなくて、仕方なく僕はおばさまたちにお礼を言って帰ることにした。
こんな時、Ωでも体格に恵まれていてよかったなって思う。
片手に買い物の荷物、片手にルカを抱っこして、重いけれど歩けないことはない。
「すぐに家に帰るからね、帰ったらちょっとお昼寝しようか」
「んっ」
ルカはぐりぐりと僕の方で顔を擦ると、大きなあくびをひとつした。
とろんとした表情は眠くて眠くてたまらないのに起きていたいって顔で、子供らしい表情だなって思うと胸がキュンとする。
正直なところ、僕に母性なんてものがあるのかどうかなんて考えたこともないことだ。
他のΩらしいΩならともかく、僕みたいにはみだしたみたいなΩには番ができるとかその先もあるとか考えたこともなくて……でも、この小さな存在が腕の中にいて、守ってあげたいと思う気持ちは偽りのない僕の心だった。
布団に寝かせてあげたかったけれど干した際の熱がまだ抜けきっていないから、僕の寝袋で寝かせることにした。
ルカが寝ている間に、追加で洗濯できるものを洗濯してしまって……朝、勢いで言ってしまった夕飯の下準備に取り掛からなきゃいけない。
ソーセージは豚ひき肉とセージとメインとした各種スパイスを入れて、玉ねぎとニンニクのみじん切りを食品用袋に入れてよくこねる。流水で冷やしながらしっかりこねてから、クッキングシートに適量ずつ伸ばしてキャンディのように両端をくるくると回して留めていく。
それを電子レンジで温めている間に野菜! とにかく野菜をたくさん角切りにする。
にんじん玉ねぎ、それから茄子に……外せないのがズッキーニと大根、ピーマン。他にも季節の野菜があれば、入れれるだけ入れると美味しくなる。
ともだちにシェアしよう!

