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第28話
出会った時の笑顔も可愛かったけれど、今の笑顔はどこにも不自然さはないし人の目を気にして笑ってるって雰囲気がないから、僕はホッと胸を撫で下ろす。
「ルカくん見っけ! おはようございます!」
「はよ、ございま しゅ」
お? と返事を聞いて嬉しくなる。
今朝と今、言葉のはっきり度合いが違う。保育士のようにどのように話しかければいいのか、なんてわからないけれどルカが僕とのやりとりで少し変化があったんだってわかった。
ルカのために何が出来るかなって考えると、胸がそわそわする。
今のこの家の状態……うぅん、家だけじゃなくてトーマ達のルカへの態度を見ていると、どうにかしなきゃいけないと思う。
警察? 児童相談所? に連絡すれば事態は好転するんだろうか? それとも、もっと他にいい手段があるかも……?
僕は思いついたものの、公的機関に連絡するというハードルの高さに怯んだ。
「……僕がそこまで踏み込んでいいのかな……」
「ままの?」
「あ、うぅん! なんでもないよ。よく寝むれたかな?」
「んっ」
ごしごしと目をこするルカはこくりと頷き返して上機嫌だった。
トーマの隣に立つリンは、見るからに面白くなさそうな表情で腕組みをしている。
「今日は僕も夕飯、食べるから!」
えーって思ったけど、機嫌を損ねてクビになりたくないからにっこりと笑って頷き返す。
幸いなことに三人分作ってある! つまり、ルカとトーマと……僕の分だ。
三人分をテーブルに用意しながら、今日の夕飯……と胸の中で泣きながら呟く。
昼のうちに作っておいたラタトゥユはいい感じに味が馴染んで野菜もくったりと柔らかくなっていて、いい匂いもしているから器に盛っているとお腹が鳴りそうだ。
ニンニク片を軽く擦りつけてトーストしたフランスパンを大人用に、ルカには食べやすいようにバターロールを用意した。
「これに乗っけて食べるの好きなんだけどなぁ」
涙と涎が同時に出そうになったけどグッと我慢して、サラダをクレープで巻いてからテーブルに並べていく。
朝、勢いで言ったメニューだったけれど、何とかそれなりに見れる食卓になったんじゃないかな?
ソファーに座ってネクタイを外しているトーマと、立ったままやっぱり不機嫌そうに辺りを見回しているリンに声をかけてテーブルへと移動してもらう。
椅子を引き出そうとして……リンはさっとリビングのローテーブルを指差した。
「ルカはそっちで食べさせて」
「えっ」
口答えじゃないけれど思わず声が出てしまう。
三人で食事をするんだから同じテーブルにつくものだとばかり思っていただけに……僕はさっとトーマに目をやった。
ルカだけ別のテーブルで食べるなんて、爪弾きにしているようだ。そのことについてトーマは何か言ってくるんじゃないかって、少しだけ期待していた。
「ルカには食べさせる人が必要でしょ?」
けれど答えを返したのはリンで、トーマは視線をテーブルの上に据えたまま何も言わない。
「えっと……だから一緒に食べるんじゃ……?」
「小さい子がいたらゆっくり食べれないし。何? 文句でもあるの?」
綺麗な顔が怒りに歪められるとそれだけで迫力があって……その目は逆らったらクビにするぞって脅しているようにも見えた。
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