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第39話
僕の偏った考えもあるんだけど、すごく子どもらしい笑顔だと思う。
ギュッと抱きしめるとふわふわとした甘い、子どもの香りがして柔らかな体温がもぞもぞと動く。
「ルカくん、幸せの塊〜幸せの天才〜」
「しゃー……?」
「しあわせ」
「しゃわせ!」
素直に僕の言葉を繰り返すルカは、外見だけでなく中身も可愛らしくて仕事を抜きにしても側にいて心地いい。
だからこそ余計に、トーマがルカにとる態度が不可解すぎて……リンもだ。他人が口出ししていいことじゃないと思うのだけれど、それでも気になってしまったのは仕方がない。
ヘーゼルナッツの色をした髪を整えて耳にかけてやって、つやつやとしたほっぺをくすぐる。
「僕が……口出ししていいことじゃないって、わかってるけど……」
どうすれば、トーマはルカに目を向けてくれるのか……僕は小さく溜息を吐いた。
「パイじゃないのか」
夕飯を平らげ、デザートを出した際の一言は僕の罪悪感を掻き立てるのに十分だった。
ルカがちょっと拗ねてみせる時の声のトーンと一緒だったからだと思うんだけど、だから余計に胸をチクチクと痛めつける。
「すみません、キウイがとても綺麗だったのでより美味しく食べていただけるものに変更しました!」
慌てて、「明日はパイにします!」って付け加えると、ほんのわずかだけれど表情が変わった。
横顔はやっぱり硬い雰囲気だったけれど、唇の端? それとも目じり? なんとなくふんわりと柔らかくなった気がする。
「そうか」
そう言うとトーマは黙々とタルトを食べて満足そうな顔をして立ち上がった。
いつも、僕には興味ないって態度だけれど、この時はちょっとだけ僕に注意を向けてくれる。でもそれも一瞬だから……
「あのっ」
「……」
ごちそうさま と立ち上がった自分に声をかけられるとは思っていなかったからか、トーマは少し戸惑っている様子だ。
「お お話がっ」
朝は慌ただしいしリンがいるから、業務的な話しかできない。
夕飯はリンが一緒だから僕は傍に近寄ることもできない、だからリンが帰ってトーマがデザートを食べる今がルカのことを話すチャンス!
「……ル、ルカぼっちゃんのことですっ」
思い切ってそう話し出した瞬間、デザートを食べて煌めいていたソーダ色の瞳がさっと濁った。
まるでこの世を直視したくないから、カーテンでも引いたような、そんな変化だ。
「その話はいい。この暮らしが虐待だと思うなら然るべき機関に通報すればいい」
「えっ⁉︎」
まさか訴えろと言われるとは思わなくて、僕は驚いて固まってしまった。
育児放棄の虐待だとして、それをこんなにあっさり認める……うぅん、通報するように進めるってどう言うこと⁉︎
「話は終わったようだな」
僕を押し退けるようにしてリビングから出て行こうとするから、僕は慌てて追いすがる。
「美味しいお魚を買うために、遠くのスーパーに行きたいので、そこまでルカぼっちゃんを連れて行ってもよろしいでしょうか!」
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