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第41話
背を向けたまま、絞り出すように出された声は怒っているって感じじゃないから胸を撫で下ろしたけれど、こっちを向いてもくれないし、トーマが何を考えているかわからない。
「トーマさま、ですね。ルカぼっちゃんはルカさまでお呼びしても?」
「…………」
Uターンして再びルカのことに話を持っていくと、やはりトーマの口は重くなって返事らしい返事は返らなくなる。
「……好きにするといい」
考え込むには長い時間が過ぎて、階段の方に向かいながらそれでもトーマはルカのことで返事をしてくれた。
ほんの小さなことだけど、それでいい。
「だってお父さんが言ってたもんね。交渉は、まず扉に靴を挟むところからって」
両手で拳を作ってむんって力を入れると、運動から離れて久しいのに力こぶがにゅっと顔を出してくる。
自慢の筋肉だけれど……連日、リンを見ているとこの筋肉を自慢と思っていいのかどうなのかってところで自信がなくなってきた。
この筋肉は、僕をΩに見えなくさせる原因の一つだ。
現に、リンはどこに肉がついているんだろうって思わせるほっそりとしたたおやかな体つきをしている。
僕の体は確かに陸上や水泳で、少しだけ僕に自信をつけてくれたけれど……今はそれが重荷になっているんだから、人間って勝手だなって思う。
「 随分と、しっかりとした体をしているな」
背後から聞こえた声に、トーマがまだ二階に行っていなかった⁉︎ って飛び上がった。
おかしなことは言ってないけれど、腕に力を入れて力こぶダンスなんてちょっとやっちゃってたのを見られてはなかったかな⁉︎
「あ あ あ、僕っ水泳と陸上をしていたのでっ!」
「水泳と陸上?」
繰り返される言葉に、僕はトーマがこんなことに興味を持つなんて思わなかったから、色々な答えを用意しようとしてパニックになった。
「ぁ、そ、そです! そうなんですっ」
「少し落ち着きなさい」
背後から落ち着かせるように声がするけれど、雇い主に背後から話しかけられて平静でいられる人間っているんだろうか? 慌てて振り返ると、思いの外真後ろにいたトーマにさらに驚いてしまう。
「君はその競技に詳しいのか?」
「はい!」
とはいえ、僕の知識なんて知れてるから僕に聞くより、ネットでちょちょっと検索かけた方がよくわかることがあると思う。
「水泳と陸上とは……なんだ?」
「え……」
水泳は、手足を使って水中を移動する動きのことでー……なんてことを聞いているわけじゃないんだろうな。
僕は、僕が昔好きだった競技のことを尋ねられて姿勢を正した。
「キラキラしたものです!」
そう答えたけれど、これならさっき考えた答えの方がマシだったことに気づいて慌てて首を振る。
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