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第46話

  「スポンサーのお話が出たのはいいけど、そういうのって面倒!」 「リン」  嗜めるような声にリンが肩をすくめるのを見ながら、「イーノフーズですか?」と問いかける。  リンはうるさそうにしたけれど、トーマは頷きながら手に持っていた茶色い封筒を持ち上げて見せてくれた。  「イーノそのママ食卓に!」ってコマーシャルが定番になっている会社のロゴが描かれている。イーノフーズの下に並ぶ五つの星マークを目で追いながら、「杏仁豆腐」と言葉がついて出た。 「は?」  冷ややかなリンの言葉に飛び上がりそうになる。 「あのっ本日は杏仁豆腐がラッキーアイテムってテレビが言ってました! もし、会食先で杏仁豆腐があれば、皆様で食べてみてはどうでしょうか」  慌てて紡いだ言葉は不自然だったのか、トーマはちょっと胡乱な顔をした。  まぁ……そうだよね、不審だよねって焦っていると、腕の中のルカがくるりと顔を向けて「いってらっちゃい」って言って手を振る。  救い船のそれはさっさと追い出したいみたいに見えて、思わず吹き出しそうになった。リンは少しムッとした様子でトーマの腕を取ると、いってきますも何も言わないままに玄関扉を叩きるけるようにして出ていってしまった。 「ふふ、ルカさま、ありがとうね」 「ちゃま?」  ぼっちゃんって呼んでいたから違和感があったのか、ルカは「ちゃま」「ちゃま」と繰り返して不思議そうにしている。 「そうです、ルカちゃまですよ」 「あい!」 「ルカちゃま」 「あーい!」  パッと手を上げて嬉しそうに返事をするルカは楽しそうだ。 「今日はお父さまのお部屋を掃除しますから、お部屋で遊んでていただけますか?」 「ぅんー?」 「きちゃない部屋のお掃除に行ってきます!」  ビシッと額に手を当ててポーズを取ると、ルカもぺち と額に手をやる。 「きちゃない!」 「そう、だからルカさまは安全なところにいてくださいね」  そう言うとルカはちょっと眉尻を落として、ペチペチと僕の顔を撫でて……それが心配してくれているんだってわかったのは、オパール色に揺れる瞳が一生懸命に僕の目を覗き込んでいたからだ。  小さな体が懸命に僕の体が無事なのか調べているのがくすぐったい。それと同時に胸がキュンとなるような嬉しさがあった。  掃除用具を入れたカゴを持ってトーマの部屋に向かう。  主がいないってわかっているけれど、念のためにノックをしてからそろりとドアを開けて……ルカがリビングで一人で遊んでいるうちに、少しでも早く終わらせてしまわないと。 「お邪魔しまーす」  昨夜、トーマに許可をとっているし、僕はこの家の家政夫なんだから入っても問題ないんだけど、なんとなくこの部屋は立ち入りにくい。

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