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第49話
それでも体の熱は舐めるように隅々まで届いて僕を支配して、前に触れる手をどんどんと加速させて追い詰めてくる。
「ゃ、ぅ、っ……ぁ、やっ 」
虚しいままにどんどんと体が追い詰められていくことから逃げたくて、気づけばもがくようにして床を転がって……でも、たどり着いた先は無造作に放り出された寝袋だ。
「は? ……ゃ、だ、め…………」
やだやだって駄々っ子のように声をあげたけれど、体は少しも言うことを聞いてくれない。
震える手で寝袋を掴むと、もう何もかもがどうでもよくなってしまった。
濃く立ち上るフェロモンの香り、袋の内側に閉じ込められていたものがサッと僕の意識を奪う。
前後左右、熱いのか冷たいのか、もう何もわからないような嵐に体の中をかき混ぜられながら、僕は掌の中に恥ずかしい雫を溢した。
ぅ……と涙が出そうになるのをなんとか堪え、自分の粗相を拭ってから慌てて部屋のドアを開ける。
耳を澄ますと階下から子供番組の体操の音楽と一緒に「う! う! おー!」と踊っているらしいルカの声が聞こえてきて、ほっと胸を撫で下ろして崩れ落ちた。
「なん なんてこと、しちゃったんだ……」
ゴミ袋の中のティッシュと自分が匂いを嗅ぎ回った洗濯物をチラッと見やって、恥ずかしさで消えてしまいたくなる。
トーマは僕をきちんと家政夫として扱ってくれているのに、僕はこんなことをしちゃうなんて……
ぎゅっと胸元を握りしめると、心臓はまだ余韻を残して跳ね上がったままだ。
体の中にはまだまだ熱が燻り続けていて、痺れるような余韻を残してくれている。
「……トーマさまの匂い、いい匂いだったな……」
すん と鼻を鳴らすようにして空気の中のフェロモンを探せば、胸を締め付けるような甘い感覚が体を責め立ててくる。
「ダメっダメっダメっ!」
なんとか繋ぎ止めた理性を総動員して、息を止めて手早く洗濯物を袋にまとめて廊下へ放り出す。
風があるから掃除機をかけた後に窓を開けたかったけれど、背に腹は変えられない! と窓を開けた。
厚いカーテンに遮られていて気づかなかったけれど、窓の向こうは菜の花畑が広がっている。
可愛らしい黄色がサワリサワリと風に揺れ、短い間の盛りを満喫しているのだと生き生きとした姿て伝えて……
「わぁ」
家の片付けと買い物とばっかりで、家の裏手に菜の花畑が広がっているなんて知らなかった。
「菜の花……おひたし、肉巻きにしてもいいな」
つい口から出たのは綺麗とかそんな感想じゃなくてどうやって食べるかだ。
花より団子 なんて言葉もあるけれど、自分自身の食い意地に苦笑が漏れた。
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