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第62話
弾けるようなソーダ色の瞳が揺らめいて、どこか僕に助けを求めているように潤む。
「私は、……それを望んでいない」
返された言葉は思いもよらないもので、トーマはルカを拒絶した。
なぜ? って言葉が出そうになったのを慌てて飲み込むと、トーマは気まずそうに拳を作って俯いている。
その姿は、さっきの言葉は本心じゃないと言っているようだった。
拒絶はしてみせた……けれどその先に、でも、でも、でも、と続きがありそうで、でもトーマからはこれ以上言葉は出てこない。
僕にはその『でも』の部分に立ち入る資格はないってわかってる。十分、わかってる! けれど腕の中でルカがショックを受けたのがわかったから、ルカのためにどうにかしてあげたくなった。
「一緒にご飯食べませんかっ⁉︎」
「なに……」
「朝ご飯か、夜ご飯のどちらか……いいえっ食べられる時だけでいいんですっ!」
僕の勢いにトーマはちょっと引き気味で、ルカは涙が引っ込んでしまっていた。
でも、二人の視線が同じように僕に向いてるっていいことだと思うんだ。
「今でも……食べているだろう」
「同じテーブルで、です! 僕が傍について、ルカさまには静かに食事をさせます! だから、一緒に食卓を囲みましょうっ」
「それがどうし……」
「それが大事なんですっ! 美味しい食事をしながら話をすれば、お互いのことがよくわかって、気まずさなんてなくなります!」
腹からの大きな声で言い返すと、トーマは怯んだ。
畳みかけるなら今だぁぁぁぁぁ! お父さんが交渉のチャンスは相手が怯んだ時だって言っていた!
「そうすればルカさまにご用意するデザートもお出しできますが」
「もしかして、私とルカ、別々のものを用意しているのか⁉︎」
本日一番の食いつき頂きましたーっ!
「はい、もちろんそれぞれに用意してございます」
トーマが、ルカの話をしていた時よりも表情豊かになっている気がしないでもないんだけど、あえて見ないふりをする。
どんな方法でもいいんだ、家族が同じテーブルについて、顔を見ながら美味しい食事をすれば……ルカに懐かれたくないなんて気持ちはすぐになくなって、にっこりと幸せの第一歩なんだって。
だから食べ物に関わる仕事は幸せの過程を作るとても誇りのある仕事なんだって。
僕はそうやって言われて育った。
そして僕の家は皆仲良しだ!
「いかがですか?」
甘味につられて揺れている姿は、親としてなんだかなぁって思うけど、それでも今より二人の距離が近づくならどうだっていい。
トーマは甘味に揺れていた自分に気付いたのか、咳払いを一つして「条件がある」ってこちらを向いた。
リンの分も毎回用意するってことかな?
「君も一緒に食べよう」
「え⁉︎ 私は雇われの身ですのでご一緒は……」
そんなことできないと慌てて返事しようとした僕の服を握っている手に力が込められる。
「いちょ ……いっちょ!」
うる と宝石のようなルカの瞳と、氷のたっぷり入ったソーダのような瞳に見つめられる圧に耐えられる人間なんているんだろうか?
「では……ご、ご一緒させていただきます」
モニョ と返事をした瞬間、二人はサッと視線を合わせて笑い合っていた。
慌ててすぐに逸らしてしまっていたけれど、今までとは違ってしっかりと顔を見てお互いの表情を見ていたから、進展したって言っていいと思う。
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