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第63話
「じゃあ……今日の……」
見上げるとちょうど十時のおやつの時間だ。
「十時のおやつにしましょうか」
そう言うと、この親子は同じ顔をして笑った。
ルカがはしゃいで、一生懸命にリビングの椅子に這い上がる。
その不安定さを見て、トーマに子供用の椅子はありませんか? と尋ねると、緩く首を振られた。
「じゃあルカさま、僕が椅子がわりになりますから、それまでじっとしててくださいね」
「あい!」
良い子のお返事をしてくれたし、ルカは椅子の上で暴れたりするタイプではないけれど、念のためにトーマにルカを見ていてもらえるようにお願いした。
流石に「見てただけ」ってことにはならないだろうけど、一応、「頭が大きくて落ちやすい時期なので、ぐらっとしたら手で支えてやってください」ってお願いしておいた。
余計な一言だけど、あるのとないのとじゃ絶対に違う一言だと思う。
真剣な目で頷いてくれたトーマを信じて僕はキッチンへ……
手元にあるのはリンゴのシャーベット、イチゴのパイの残り、イチゴのコンポート、クッキー二種、生のリンゴだ。
こちらは少しずつワンプレートに盛るとして、飲み物でちょっと特別感を出そう。
ココアを少し濃いめに淹れて少しだけ冷ます。その間に生クリームを泡立てるのはこの僕の黄金の右手! なんと一分かからずに泡立てた記録を持つ強者なのです!
気合いを入れて泡立てていると、テーブルで向かい合う親子の姿が目に入った。
気まずそうにして、でもトーマはちゃんとルカがぐらっとしたら手を出そうと慌てている。
「なーんだ、心配のしすぎだったのかな」
ルカに懐かれるのが本意ではないって感じはかけらもなくて、そこにあるのは普通の親子の景色だ。
それを見ているとちょっと胸がふわふわしてきて、ちょうどボールの中の生クリームと同じようにもこもことした気分だった。
生クリームの上にココアの粉でルカにウサギを描き、トーマには……なんとなく馬を描いた。
「うしゃ! しゃーさん!」
「うさぎさんですよ、気に入りましたか?」
カップの表面に揺れる生クリームの泡の上、ウサギ……のつもりで描いたそれをルカはわかってくれたらしい。
「君は器用だな。可愛らしいフラミンゴだ」
そう言ってトーマは柔らかい笑みを浮かべるけれど、僕は笑えない。
やっぱり馬はちょっと上級すぎたか……初心者向けのハートが良かったかもしれない、今度はそれにしよう!
「よ、良かったです。もう二日酔いは大丈夫ですか?」
「二日酔い……ああ、もうなんともない」
そう言うとトーマは細長いイチゴのパイをパクリと口に入れて……視線を向けると同じタイミングでルカもイチゴのパイに手を伸ばしてかぶりついている。
同じタイミングで咀嚼する姿を見ていると、笑っちゃダメなのにふ と口から声が出てしまう。
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