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第64話

「どうした?」 「どった?」  くるりと二つの視線が絡まりながら僕を見る。  二人は親子だから当然案だけど、本当によく似ててちょっと首を傾げる姿も一緒だった。  大きいルカと小さいトーマだって思ったら胸がキュッとなるのが止められなくて……思わず噎せて顔を逸らす。 「い、いえっなんでもないです。ちょっと水分が足りなかっただけで……」  軽い咳き込みで誤魔化すと、トーマは「そうか」と言ってキッチンの方へ行って水を手に持って帰ってくる。 「水分は大切だ。よく摂りなさい」 「っ……ありがとうございます」  水を飲みながら、そろりと盗み見ると二人とも同じタイミングでクッキーに手を伸ばしていて、僕は再び噎せることになった。  ルカの帽子が欲しいと思いながらも、洗濯物の山の中にもどこにも見つからなかった。 「通販で買うか……でも実物を見て買いたい……」  ルカの服はどうしてだかウサギモチーフのものが多くて、尻尾がついていたり耳がついていたりするのが多い。  それなら帽子もウサギ耳のものがいいのかもしれない。でも遊ぶことを考えたら邪魔にならないシンプルなものがいいし……でもでも日差しを避けるって機能度外視のウサギ耳つきベレー帽とかめちゃくちゃ似合いそう。  いや、ルカなら他の帽子も被りこなせるはず!  帽子屋に行って、ここからここまでって買ってもいいかもしれない。   「ままの?」 「はい。今準備が終わりますから、お出かけしましょうね」  色々妄想していた僕を不審に思ったのか、ルカは首を傾げてエプロンをちょいちょいと引っ張る。  ルカのお茶とウェットティッシュと……あの二人のおばさまが、子供とお出かけするなら持っておいたほうがいいわよって言っていたものを詰めたリュックを背負い、トーマにひと声かけに行く。 「トーマさま。ルカさまとお散歩に行ってきます。お昼までには戻りますので」 「ああ」  振り返りもせず、トーマはデスクに向かったまま返事をする。  仕事をしているらしいその背中は硬質で、お茶をしていた際の雰囲気の欠片も潜んでいない。 「いってまいります」  デスク傍の窓のカーテンが引かれているから部屋の中は柔らかな光に満たされていて、最初の病的な薄暗さはどこにもない。  頑張って片付けた甲斐があったなって思った瞬間、この部屋で自分がしてしまった粗相も同時に思い出してしまった。  もう床一面の脱ぎ捨てた服はないけれど、部屋の隅にはまだ寝袋がある。  普段使っているそれは、トーマの匂いを濃く閉じ込めていて…… 「――っ」  ゾワ と背中を駆けた痺れに、大慌てで首を振った。    

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